ヨーロッパの若者は「未知のブランド」も恐れない?──パリ・モーターショー2024<外国車編>【Movie】
10月に開催された「パリ・モーターショー2024」の見所を、人気コラムニストの大矢アキオ ロレンツォが紹介。前回のフランス車編に続いて、今回は外国ブランド編をお届けする。 【写真】なんだこのクルマは!? パリで見かけた斬新すぎる「ソフトカー」
欠席外国勢が復帰。ただし日本は……
まず、フランスのブランド別自動車販売順位を紹介しよう。2023年の1位はルノー(27万7914台)、2位はプジョー(24万1512台)、3位はルノー・グループでルーマニアを本拠とするダチア(15万6390台)、4位はシトロエン(12万5932台)だ。つまり4位までをフランス系が占めている(データ参照:FichesAuto.fr)。 5位には、外国系ではトップのフォルクスワーゲン(VW:12万0225台)が入っている。それをフランス国内工場でヤリスを生産しているトヨタ(10万7950台)が追う。そして7位はテスラ(6万3041台)である 今回のパリ・モーターショーに出展していた欧米および韓国系主要乗用車ブランドは、以下のとおりだ。 ・ステランティス(アルファ・ロメオ)、 ・VWグループ(VW、アウディ、シュコダ) ・BMWグループ(BMW、MINI) ・キャディラック ・フォード ・テスラ ・キア いずれも前回2022年には欠席だったブランドである。いっぽうで今回、日系メーカーは、すべて不参加だった。そうしたなか東京の自動車部品サプライヤーTHKは、2023年東京モビリティショーで公開した「LSR-05」を欧州プレミアした。この実走可能なコンセプトカーのデザインは、前・日産自動車チーフ・クリエイティブ・オフィサーの中村史郎氏率いるSNデザインプラットフォームによる。
VWの“転換”とフォード式レトロ
今回グループ内の3ブランドを出展したVWグループから見ていこう。経営不振が伝えられる同社であるが、フランスでは堅調だ。とくにVWブランドは2023年の販売台数が2022年比で23.6%増加。過去7年間で最高の登録台数を記録した。今回プレゼンテーションに立ったドロテー・ボナシーVWグループ・フランス代表によれば、現在6.8%あるフランス国内シェアは、年内には7%を達成することが確実と胸を張った。 そのVWブランドは7人乗りSUVの新型「タイロン」を初公開。同車は従来の「ティグアン」と「トゥアレグ」の間を埋めるモデルである。実は正確にいうと、Tayronの名称は2018年から中国の合弁工場で作られていた車種に使われていたもので、今回の2代目から欧州その他の地域でも使用されることになった。 アウディはEVの「Q6スポーツバックe-tron」を初公開した。姉妹車であるQ6 e-tronと比較して全高を37mm下げ、ファストバック形状としたことで空気抵抗係数(Cd)を0.28から0.26へと低下させている。 VWブランドはプレゼンテーションで、「内燃機関」「マイルドハイブリッド」「EV」の3種で様々な顧客ニーズに応え、ブランドのDNAである「手の届きやすい価格」を守っていくと説明。アウディも同様の3種のパワーユニットで、ブランドのモットーである「技術による前進」を実現すると語った。彼らが従来の強力なEV推進から、より現実の市場に沿った柔軟性ある戦略へと転換したことがわかる。 ところで前回のフランス車編で記したように、ルノーは今回、「4 E-Tech100%エレクトリック」を公開した。内外装のデザインは、「シトロエン2CV」とともに戦後フランスを代表する大衆車ルノー「4」に範をとったものだ。そのルノーは、1971-79年のクーペ「17」をEVで解釈したコンセプトカーも公開。それらを、2026年に発売を予定しているEV版「トゥインゴ」、既発売の「5」とともに展示した。 そうしたレトロはフォードにも及んでいた。彼らは、1969年から86年まで造られた懐かしいクーペモデル「カプリ」の名前を、新しい5ドアクーペEVに冠した。ヘッドライトより1段下がったセンターグリルの意匠も、歴代カプリを継承したものだ。いっぽうでプラットフォームはVWが開発したMEBを使用している。先に往年のモデル名をリバイバルさせた「マスタング・マッハE」および「マスタング」は、欧州プレミアム市場でそこそこの成功を収めている。カプリがそれに続けるかが注目される。