ヨーロッパの若者は「未知のブランド」も恐れない?──パリ・モーターショー2024<外国車編>【Movie】
小さなブースからも窺える潮流
今回も最後に、面白い出展車を1台紹介しよう。「ソフトカー」はスイスの研究開発企業によるものだ。フラットなEVシャシー上に、いずれも新開発の樹脂製ボディおよび4人乗り内装を載せたものだ。 ひょうきんなフロントマスクに誘われて手で触れた車体は、勝手に想像したようなプヨプヨした“ソフト”では残念ながら無かった。しかし、駐車時等の軽度な衝突に耐えるというから、相応の復元力があるのだろう。さらに一般的な乗用車で4万5千点ある部品を僅か1800点にまで削減した恩恵で、交換に要する部品点数は、きわめて少なく抑えられるという。今回の出展目的は、生産のノウハウも含む技術ライセンスを購入してくれる企業を探すためだ。 自身のスタジオを主宰するフランソワ・ビュロン氏によるデザインは、極端な例とはいえ“素”を重んじる気性に溢れている。クローム製モールの量や革張りシートを誇った時代とは明らかに異なるのだ。何を隠そう、ダチアもそうしたデザイン路線で、欧州の若い世代の心を掴んだ。ブースを訪ねれば訪ねるほど、潮流がパズルのようにつながり見えてくる。それがヴァーチャルにはない、リアルなモーターショーの魅力なのである。 在イタリア ジャーナリスト/コラムニスト/自動車史家 【大矢アキオ ロレンツォ|Akio Lorenzo OYA】 音大でヴァイオリンを専攻、日本の大学院で比較芸術学、イタリアの大学院で文化史を修める。『シトロエン2CV、DSを手掛けた自動車デザイナー ベルトーニのデザイン活動の軌跡』(三樹書房)、『ザ・スピリット・オブ・ランボルギーニ』(光人社)など著書・訳書多数。シエナ在住。NHKラジオ深夜便ではリポーターとしても活躍中。イタリア自動車歴史協会会員。
文・写真= 大矢アキオ ロレンツォ(Akio Lorenzo OYA)