ヨーロッパの若者は「未知のブランド」も恐れない?──パリ・モーターショー2024<外国車編>【Movie】
新興ブランドにもチャンスが?
ただし、今回のパリで最も活気がみなぎっていた外国勢といえば中国で、BYDをはじめ計8ブランドが欧州市場向けEVを披露した。とくに3館用意されたうちの1館には中国ブランドの大半が集中。いわばチャイナ・パビリオンの雰囲気が漂っていた。 そうしたなか、欧州のジャーナリストたちに特に注目されたのは2015年設立の「リープモーター」である。なぜならば2023年、ステランティスが同社に約21%の資本参加を行ったからである。さらに両社は、アムステルダムに合弁会社を設立。同社はステランティス主導のもと、大中華圏以外の全世界販売権および製造権をもつ。 実際彼らによる販売は、すでに2024年9月からヨーロッパ9カ国で始まっている。歴史あるブランドを数々擁するステランティスが、創業10年足らずのスタートアップと手を組んだのである。VWグループとともに業績不振が伝えられるステランティスにとって、大きな賭けであることは疑いの余地がない。 欧州連合(EU)は2024年10月29日、中国製EVに最大45.3%の追加関税を課すことを正式決定した。その影響は目下未知数だが、ブランドという観点でいえば、新興メーカーは欧州でけっして不利ではない。なぜなら人々の自動車ブランドに対する意識は、近年劇的に変化しているからだ。 たとえば冒頭のフランスの2023年ブランド別登録台数で、2022年には7位だった「メルセデス・ベンツ」は、9位にまで後退している。いっぽうで、7位のテスラは、2022年の15位からの急上昇であった。往年の英国車の商標を引き継いだ上海汽車の「MG」は、2022年の23位から18位へ、吉利-ボルボ系の「リンク&コー」は圏外から30位に浮上した。ついでにいえば今やルノー、プジョーに次ぐ3位のダチアは、2005年には23位でしかなかった。 そうしたトレンドのなか、今回パリで欧州上陸を宣言した中国系EVの中には、従来のブランド感覚にとらわれない世代から支持を得るものが出現する可能性がある。 ヨーロッパ市場は、成熟しているようにみえて、実はまだまだエキサイティングなのである。