「夫に感謝すべき」「女性は控えめであるべき」妻を離婚寸前まで追い詰めてしまった…男性(49)は自身の“モラハラ体質”とどう向き合ったのか
「感情日記」の効果
基次さんは、瑠美さんから「実はあなたとの離婚を考えていた」と言われてから約10年経過した現在も、どのような状況でどんな喜怒哀楽の感情を感じるのか、「本当はどうして欲しかったのか」などを書き出す「感情日記」を今でも続けている。 これにより基次さんは、1ヶ月に1度以上怒りの爆発があった頃に比べ、現在は6ヶ月に1度くらいの頻度にすることができているほか、子どもの頃から苦手だった、自身の感情を言語化する力を身につけていった。 怒ること自体をなくすことは難しいが、身体中を震わせるほどの強い怒りを感じていた以前に比べると、怒りの量や強さ自体も減らすことができているようだ。 さらに、基次さんと瑠美さんは、約10年前、「モラルハラスメントを相談できる場所がない」と感じたことから、2015年に「モラルハラスメント解決相談所」を開設。現在まで、加害者・被害者に関わらず、モラルハラスメントに関する悩みを解決に導いている。 この「モラルハラスメント解決相談所」でも「感情日記」をつけるワークは導入されている。自分自身に向き合う作業は地道で楽しいものではないが、加害者自身の“モラハラ体質”改善だけでなく、被害者であるパートナーに、加害者の“モラハラ体質”改善の努力を可視化できるという意味でも役立っているようだ。
トラウマは連鎖する
基次さんの父親の鉄工所が倒産した時、父親は60歳、母親は57歳だった。その後も父親は別の鉄工所に勤め、78歳になった現在も後継者育成役として働き続けている。 ところが母親は、父親の会社が倒産した時に、家計の足しにと始めた慣れないホテルのベッドメイクのパートに向かう際に自転車で転倒。股関節にボルトを入れる手術をし、足が不自由になってしまってからは、家の中で酒を飲んで過ごすようになってしまっていた。 「父が帰宅すると、母はほぼ泥酔状態で、父が『酒ばかり飲むな』と叱ると逆上して、『あんたも昔は浴びる程飲んでいただろ! それで私に散々迷惑をかけてきた! だから、あんたに偉そうに言われる筋合いはない!』とか、『うるさい! 黙れ! 今すぐ離婚してやる! 今すぐ、ここ(マンションの3階)から飛び降りてやる!』などと激しく反発します」 驚くことに、基次さんが子どもの頃と、両親の立場が逆転している。 母親は息子である基次さんの言うことも聞かず、「私は酒は飲んでいない」「全く問題ない」と言い張り、病院も拒否され、お手上げ状態だ。 「僕が結婚してから、母は酒が入ると、過去に父がしてきたことを咎め始めるようになりました。でも僕は、父の鉄工所で働いた数年間で、父が糖尿病を患いながらも僕たち家族のために一生懸命働いてくれていたことを理解したので、今は父に対して恨みはありません」 もしかしたら母親は、基次さんが自分の手を離れるまで我慢していたのかもしれない。そして父親は、自分の過去を悔いているからこそ、母親の暴言を受け止め続けているのかもしれない。 「しかし僕は、父が母に対して行っていたモラハラ行為を、無意識的にではありますが、妻に対して再現してしまいました。この原因は、自分の偏った結婚観や『マイルール』、さらに発達特性を言い訳にして、自身の感情の言語化を怠ったこと。これらが重なった結果だと解釈しています」 多くの人は育った家庭しか知らない。そのために、新しい家庭を築けば、無意識的に育った家庭を再現しようとする。その家庭が夫婦双方にとって過ごしやすく、違和感のないものであれば問題はないが、そうでない場合はすり合わせが必要となる。その際に、どちらかだけが無理をして合わせようとしたり、無理やり「合わせろ」と強制すると、その家庭には依存やハラスメントが生じる。基次さんと瑠美さんの家庭がそうだった。
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