ハンドボール最高峰の地で進化続ける吉田守一。監督交代劇を乗り越え、パリでメダル目指す彗星JAPANの現在地
突然の監督辞任で激動の数カ月。パリ五輪初戦で「恩返ししたい」
――パリ五輪予選では、安平選手とともに攻守でチームを牽引しました。今年1月のアジア選手権でも20年ぶりの準優勝という結果を残しましたが、2月にはダグル・シグルドソン監督の辞任が発表され、カルロス・オルテガ監督の就任が決まりました。前監督が急きょチームを離れることを知った時はどんな思いだったのでしょうか? 吉田:ダグルがやめることは、報道が出て初めて知りました。それまで何も話はなくて、最後の練習もいつも通りに解散しましたから。ただ、今振り返ると、1月のアジア選手権でも、メンバーがかなり変わっていたんです。どんな意図があったのかはわからないですが、僕の推測では、(就任した)クロアチアの監督になる意思は決まっていた中で、最後にいろいろな選手を試してオリンピックにつなげようというイメージがあったんじゃないかなと思います。結果的に、その選手たちが結果を出したことは良かったです。オリンピックに向けて選手層は厚くなれば厚くなるほどいいことですから。 ――オリンピックを数カ月後に控えたこの時期に、監督が変わることへの不安はなかったですか? 吉田:監督がやめることでいちいち落ち込んでいても仕方ないですし、新しくトップレベルを知る監督が来てくれたことをポジティブに捉えています。不安を感じさせないように、アシスタントコーチのウーゴ(・ロペス)も戦術を緻密に練って、的確な指示をくれているので、不安はないです。チームはどんどん良くなっている気がします。 ――それは楽しみですね。パリ五輪では、7月27日の予選ラウンド初戦でクロアチアを率いるダグル監督と再会しますが、どんな思いがありますか? 吉田:負けたくないですよね。勝って恩返しじゃないですけど、「日本をやめなかったらよかったなぁ」と思わせられたらいいなと思います。
オルテガ新監督の下で再スタートを切った彗星JAPANの現在地とは?
――オルテガ新監督とはもう話をしましたか? 吉田:まだこれからなのですが(※編集部注:取材は5月10日)、期待してくれているようなので頑張ります。以前(2016年から17年にかけて)日本代表を指揮していた時の選手たちに話を聞いたら、「とにかく厳しいけれど、緻密な戦術でやりやすかった」と言っていたので、僕らはその指示通りにやるだけかなと。 ――戦術面ではどんなところが楽しみですか? 吉田:新監督は特にディフェンスが特徴的で、ヨーロッパでもあまり見ない特殊なディフェンスなので、チームにはまればすごく良くなると思います。 ――前監督の残してくれたものと、新監督のやり方をどのように融合させていきたいですか? 吉田:ダグルは基本的なことをしっかりやっていたので、その部分は生かしつつ、新監督の緻密な戦術通りにやるのが一番強くなると思います。 ――去年からかなり合宿を重ねてきていますが、選手同士での話し合いも、かなり増えているのでしょうか。 吉田:そうですね。オリンピック予選の時は特に選手ミーティングを重ねましたし、継続してアジア選手権の時も話して、良くなりました。新監督の下でかなり共通認識が深まると思うので、選手間のコミュニケーションでしっかりと振り返りたいと思います。 ――予選ラウンドの組み合わせは、スペイン、クロアチア、ドイツ、スロベニア、スウェーデンとともにグループAに入りました。どんな印象ですか? 吉田:フランスとデンマークとは別れたので良かったと思いますし、勝てるチャンスはあると思います。ヨーロッパの強豪はレベルが違うのでメダルはハードルの高い目標ですが、まずはベスト8に進出して、その先を目指したいです。 ――ベスト8の壁を破るために必要なことはどんなことだと思いますか? 吉田:課題は一つではなくて、すべてですね。体格やプレーの質など、ヨーロッパのトップの国とはまだかけ離れていると思っています。ただ、新監督は元々トップリーグで指揮を執ってきた監督で、チャンピオンズリーグ2連覇したこともあるので、その監督の指示に対して選手がどれだけ忠実にプレーできるかがカギになると思います。