また交代?1年で4人目の英語教員 教員の不足・働き過ぎ問題が子どもにしわ寄せ
「待ったなし」の教員不足対策
「ブラック労働」というイメージが定着してしまった教育現場の問題。それを大人が解決できぬまま、そのしわ寄せは着実に子どもたちへと向かう。 教員の欠員について、文部科学省は21年度に初めて調査した。4月の始業日時点で、全国の公立の小中高と特別支援学校の5・8%にあたる1897校で教員の欠員が生じていた。産休などで欠けた教員の代役となる「臨時的任用教員」(非正規教員)を補充できないためで、欠員数は全国で計2558人に上った。 その後の文科省調査でも、教員不足が「前年度より悪化している」と回答する教委数が「改善した」を上回り続ける。 教員が不足する理由の一つに、職業として人気がなくなっていることがある。 公立学校教員の採用試験の倍率は低下傾向だ。全国の都道府県・政令市教委などによる23年度の採用試験倍率は3・4倍で、ピーク時(00年度で13・3倍)の4分の1に下落して過去最低になった。志望者が減っているためで、正規教員を不合格になった人らが登録する臨時的任用教員の数も先細りし、欠員が生じれば穴埋めが困難な状況だ。 公立学校教員はどれだけ働いても残業代が支払われない。労働基準法が適用される国立、私立学校の教員とも異なり、極めて珍しい立場と言える。公立学校教員には、自己研さんなど勤務時間にとらわれない自発性が期待されているためだ。 残業代の代わりに、給料月額の4%を「教職調整額」として上乗せ支給することが教員給与特別措置法(給特法)で定められている。このため、どれだけ働いても「自主的なもの」と解釈され、長時間労働が問題化している。これが「定額働かせ放題」と批判されるゆえんだ。 文科省は24年夏、教職調整額を4%から13%に引き上げる方針を示したが、現職教員からは給料の増額よりも仕事の削減を求める声が大きい。
各党も活発議論、専門家「教育の質維持を」
外国籍や発達障害の子の増加、オンライン上で複雑化するいじめ、「モンスターペアレント」への対応、そして現行の学習指導要領による授業コマ数の増加……。教員は異口同音に「仕事が増えた」と言う。 衆院選では、教員の待遇改善策も論点になっている。与党が「教職調整額の大幅引き上げ」や「教員の大学(学部生)での奨学金返還免除や減免」などを公約に掲げるのに対し、野党からは「教員の授業の持ち時間に上限を設定」や「給特法の廃止」などが示されている。 早稲田大の油布佐和子名誉教授(教育社会学)は「教員の多忙さを放置すれば、高い志を持つ優秀な人ほど学校現場に落胆して教壇を降りてしまう。教育の質を維持するためには、長期的な視点から教員の人数を増やしたり、仕事を減らしたりする方法が検討されるべきだ」と指摘する。【深津誠】