勤勉なのに労働生産性が低い…。日本の中小企業が抱える「深刻な根本原因」、一番の解決策は“いつもと違う顔”
日本企業の労働生産性が低い原因として、「効果のない会議」、「部下を管理するためだけに書かせている報告書」など、効果的ではない業務についてよく挙げられます。しかし、こうした業務を効率化し改善するだけでは問題は解決しない、と社員数50名の新聞販売店を23年間経営し、多くの企業の経営支援に携わってきた米澤晋也氏は言います。日本の中小企業の労働生産性が低い根本原因と、最も有効に働く解決策について、米澤氏が解説します。 都道府県「残業時間」調査
労働生産性は「OECD加盟38ヵ国中27位」という結果に
日本企業は、勤勉なのに上手に稼げていない……近年、労働生産性に関する調査から、そんな実態が浮き彫りになっています。 時間当たり労働生産性は、OECD加盟38ヵ国中27位と低い位置に留まっています。決して労働生産性が上がっていないわけではありません。1995年と比較すると、時間当たり労働生産性は16%ほど上昇しています。 しかし、中小企業を中心に企業の稼ぐ力は高まらず、賃金水準は低い状態が続いています。 日本生産性本部が2023年8月に、従業員数300人以上の企業を対象に、生産性に関する調査を行ったところ、7割が労働生産性に対し強い危機感を抱いているとともに、非常に根の深い課題を認識していることが分かりました。 本記事では、最新の調査をもとに、問題の本質に迫るとともに、労働生産性向上を通じ、企業力を高める術を考えたいと思います。
業務改善だけでは労働生産性は改善しない
本記事では、労働生産性を、次の計算式で労働者1人1時間あたりの労働生産性として算出します。 「労働生産性=付加価値額÷総労働量」 付加価値額とは「売上総利益」(粗利益)を指します。 例えば、ある企業で製造した商品の1個あたりの売価が6万円だとします。製品1個あたりの原価が3万円とすると、製品1個あたりの粗利益は3万円になります(労務費は原価に入れずに計算します)。 その製品を5個販売すれば、売上高は30万円、売上総利益は15万円になります。これを5人の従業員が8時間働き産出したとすれば、労働者1人1時間あたりの労働生産性は3,750円となります。 労働生産性を高めるためには、分子を減らす(労働量を減らす)か、分母を増やす(売上総利益を増やす)の2つの方法が考えられます。分子を減らすためには業務改善が必要です。