「不文律」破り非製造・金融…経団連新会長に日生・筒井氏、「驚くほど同じ考え」十倉氏の意向色濃く
経団連の次期会長に日本生命保険の筒井義信会長(70)が選ばれた。「財界総理」と呼ばれる会長ポストはこれまで、製造業出身者が選考の基本的な「不文律」となってきた。日本経済全体を俯瞰(ふかん)できるのは製造業だとされてきたためだ。初の金融機関出身の会長誕生は産業構造の変化を象徴する一方、課題もみえる。(石黒慎祐、米沢知史)
十倉雅和会長は17日、東京都内で報道陣に筒井氏の次期会長就任を明らかにした際、筒井氏を選んだ理由をこう説明した。
十倉氏は任期中、経済の好循環実現に向けて賃上げの旗を振り、社会保障費の増大で財政が逼迫(ひっぱく)する中、社会保障制度の改革を訴えるなど、経団連の活動には社会的な視点が必要との認識を示してきた。今年5月の記者会見では、後任について「社会・経済を大局的に捉え、発信できる方を選びたい」と発言していた。
選考レース
十倉氏の任期最終年度となり、選考レースの号砲が鳴った時点では、次期会長の候補者として筒井氏のほか、日立製作所の東原敏昭会長や日本製鉄の橋本英二会長、非製造業ではNTTの澤田純会長、三井物産の安永竜夫会長らの名前が挙がっていた。選考が進む中で、東原氏は「日立の会長職に専念したい」との意向を強め、米鉄鋼大手USスチールの買収計画を主導する橋本氏も、「経団連会長は他に多くの適任者がいる」と漏らしていた。
それでも、歴代会長の中に「製造業が日本をリードする形は変わっていない」との声もあり、製造業が軸との見方が根強かった。だが、十倉氏は製造業を推す声を振り切り、11月に東京・大手町の経団連会館に筒井氏を招き、次期会長を打診した。筒井氏は即答を避けたが、数週間後に受諾したという。筒井氏に近い日生の幹部は「打診がきたことにも、受けたことにも驚いた」と話す。
十倉氏は当初から、「製造業にこだわる時代ではない」と発言しており、「会長の意向が色濃く反映した人事」(経団連幹部)となった。