『S&P500』『オルカン』絶好調は「円安」のおかげ…「円高」になったらどのくらい下がるのか?
「円安」になるほど「価格は上昇」…知っておきたい「為替」と「インデックスファンド」の関係
国内外の株式は軟調となっているが、NISAで大人気の『S&P500』や『オルカン』といったインデックスファンドの値動きは堅調を維持している。その最大の理由は、為替相場での円安の進行だ。「為替ヘッジなし」の場合、円安になるほど価格は上昇する。しかし、逆に円高に振れると下落に転じる。では、円相場の価格への影響度は、実際はどのくらいなのか? 海外インデックスファンドの基準価額の仕組みについて、専門家が解説する。 【実名公開】楽天証券”中の人”に聞く!オルカン・S&P500との組み合わせに向く日本株アクティブ ◆株式市場の不調を尻目に『S&P500』や『オルカン』は絶好調 米国の株式市場は、3月下旬にピークを付けた後、下落に転じ、調整局面が続いている。日経平均株価も、同じく3月下旬に4万1000円を超えた後、さえない展開に。ネットニュースやSNSなどでは、「新NISAスタート後の初めての試練」といったテキストが散見されるが、痛みを感じている人はそれほど多くないのではないか。 というのも、NISAで圧倒的人気を誇る、『S&P500』や『オルカン』といったインデックスファンドは、最高値近辺での動きとなっているからだ(オルカンとは三菱UFJアセットマネジメントの『eMAXIS Slim』シリーズ「全世界株式」【オール・カントリー】の通称)。 その理由は円安の進行だ。ほとんど個人投資家は、為替相場の変動リスクをすべて負う「為替ヘッジなし」なので、投資の際には、円をドルなどの外貨に両替することになる。そのため、円安が進めば進むほど、外貨建て資産であるS&P500やオルカンの価格が上昇するのだ。 ◆指数を超える「円安」による上昇率 円安の影響は想像以上に大きい。米株式市場に上場する約500の米企業で構成されるS&P500は、’23年の年末から’24年4月末まで約7%上昇しているが、円換算ベースのインデックスファンドは約19%上昇した。この約12ポイントの差が円安の影響と言える。 オルカンはどうか。原指数である「MSCIオール・カントリー・ワールド・インデックス」(「MSCI ACWI」)の現地通貨ベースの上昇率は、同じく昨年末から’24年4月末まで約5%上昇している。円換算ベースでは約17%上昇で、S&P500と同じ約12ポイントの差。こちらも円安によって12%上昇と、原指数の上昇率を超えている。 ◆ファンドが連動するのは運用会社が算出する円換算ベースの指数 S&P500やオルカンといった、海外市場に投資するインデックスファンドに対する、為替レートの影響は、一般的に思われているよりも大きい。それは、ファンドの基準価額が決まる仕組みを把握すればよく分かる。そこで、改めて、海外に投資するファンドの基準価額について解説をしよう。 『eMAXIS Slim』シリーズの月報や運用報告書をみると、値動きが連動するのは「配当込み・円換算ベース」となっている。S&P500やMSCI ACWIの原指数ではない。S&P500やMSCI ACWIの原指数にも「配当」は反映されるので、違いは「円換算ベース」になる。そして、この円換算ベースのS&P500やMSCI ACWIというのは、運用会社が〝独自〟に算出している。『eMAXIS Slim』シリーズであれば、三菱UFJアセットマネジメントが算出する。