「緊張で頭が真っ白」広がる若者の″電話恐怖症”◆達人が教える応対のコツ【時事ドットコム取材班】#令和に働く
オフィスの電話が鳴るとビクッとする、受話器を取ると緊張で頭が真っ白になる―。特に働き始めたばかりの人ほど、こんな経験をしたことがあるのではないでしょうか。20~30代の7割超が「電話応対に苦手意識を感じている」という現代。「電話恐怖症」が広がる背景には何があるのか、どうしたら克服できるのか、取材しました。(時事ドットコム編集部 谷山絹香) 【図解】ひと目で分かる―年代別・電話のニガテ意識 ◇電話よりチャットがありがたい 大型連休が明けた2024年5月中旬、JR新橋駅周辺でこの春入社した新入社員を探し、電話業務について尋ねてみた。「電話に出なければいけないのは分かっているが、一瞬ためらってしまう」と話すのは、営業に配属されたという女性(23)。「電話は考えながら話す必要があるので、言葉に詰まってしまうこともある。先方が聞きたいことを簡潔に答えられているか不安」と話し、「文面でのやりとりの方が不自然なところを確認できるので、急ぎでなければメールやチャットで連絡をもらう方がありがたい」と打ち明けた。 他の新入社員からも「敬語の使い方に自信がない」「電話が鳴っている音が聞こえると緊張する」といった声が聞かれた。金融機関で働き始めた男性(22)は「1日に10回ほど電話に出るが、一度、想定外の質問をされた時に頭が真っ白になった」と苦笑い。「入社から1カ月経ってようやく業務に慣れてきたが、初めは電話に出るのが怖かった」と振り返った。 ◇新人記者も「自宅で電話出る機会なし」 なぜ若者が電話を苦手に感じるようになったのか、時事通信社の新人記者らにも話を聞いてみた。最も多かったのは、「実家に固定電話はあったが、電話に出る機会が少なかった」との意見。女性社員(22)は「自宅にかかってくる電話は、セールスや勧誘の内容がほとんどで、親に『電話がかかってきても出なくていい』と言われていた」といい、「知らない人と電話で会話したのは、アルバイトのときが初めてだったかもしれない」と話した。 「知らない番号から電話がかかってきたら、電話番号を検索してから折り返すようにしている」「店の予約も電話ではなく、できるだけインターネットサイトを使っている」という意見も。総じてうかがえたのは、若い世代にとって、電話は主に「素性が分かっている相手とするもの」であるということだった。 ◇若者の7割、電話が苦手 こうした若手世代の苦手意識は、電話業務に関する調査でも浮き彫りになっている。AI電話応答サービスを展開する「ソフツー」(東京都中央区)は、2023年8月、20歳以上の働く男女562人を対象にオンラインで「電話業務に関する実態調査」を実施。それによると、「電話に対して苦手意識を感じているか」との質問に「とても感じる」「やや感じる」と回答した人は、全体の57.8%に達し、20~30代では72.7%に上った。 「オフィスで固定電話が鳴ると不快に感じる」と回答した人も全体の44.8%を占めた。不快に感じる理由を複数回答で尋ねたところ、40~50代のベテラン世代では、「手を止めて対応する必要があり、集中力が途切れ業務効率が悪い」との回答が7割以上を占めたのに対して、20代では、「自分の知識で正しく回答できるか不安(41.4%)」、「上司にうまく取り次ぎできるか不安(27.3%)」と答えた割合が他の年代に比べて高かった。 同社の担当者は「SNSでチャットやメッセージ機能が普及したことに伴い、電話で話す機会が減り、電話に苦手意識を感じる『電話恐怖症』に陥っている若者が増えている」と分析。「年代によって電話を否定的に感じる理由にも違いがある」とみる。