見渡す限りの車、車、車…聞こえてきた中国″バブル崩壊の足音″「急増するEVの墓場」衝撃写真
見渡す限りの車、車、車――。 中国浙江省の省都・杭州市に現れたのは巨大な電気自動車(EV)の廃棄場だ。打ち捨てられたEVは200~300台ほどある。その大半がタイヤはパンクし、車体は錆(さ)びて、見るも無残な状態になっている。 【画像】全体が錆びつき、見るも無残な姿に…「中国EVの墓場」現地写真 今、中国ではこのような「EVの墓場」が増加している。浙江省内の地方都市には東京ドーム2個分の敷地に、2000台ものEVが廃棄されている超巨大な廃棄場も存在する。 なぜ「EVの墓場」が増えているのか。その背景には、世界を牽引してきた中国EV市場の翳(かげ)りがある。 「中国は新エネルギー車(BEV/FCEV/PHEV)が’15年から9年連続で販売台数世界1位を記録し、昨年は約950万台を売り上げました。一時は国内に約300社ものEVメーカーがありました。 しかし、ここ2~3年で倒産する会社が急増しているんです。政府は『市場の育成期間は終わった』として、’20年から企業への優遇措置や購入者への補助金を段階的に減らしました。その結果、EVメーカーは’21~’23年に70社以上が倒産。’26年までには7割が淘汰されると見られています」(全国紙経済部記者) 倒産ラッシュが続いているのは政府の政策だけが理由ではない。中国事情に詳しい国際政治評論家の宮崎正弘氏は、その背景をこう分析する。 「政府の優遇政策目当ての参入企業があまりに多かった。’10年代にも半導体優遇政策で同じことが起きました。このときも詐欺まがいの起業も含め、1200社以上が乱立し、補助金をもらったら撤退する……なんてこともザラでした。 大手IT企業『バイドゥ』の出資のもと、’15年に設立された自動車メーカー『WMモーター』なんて、赤字にもかかわらず、創業者が株式も含めて数百億円の報酬を得ていたことが発覚。それが経営難の原因になったとされ、昨年10月に破綻しました。中国の経営者には、こういった自分だけ儲かればいいという人もいて、長い目でモノ作りをやろうという気概を持つ人は少ない。それも、大量倒産を招いた一因でしょう」 理由はほかにもある。 「エンジンやトランスミッションのないEVはガソリン車に比べ部品数が少ない。そのため、『EVは簡単に作れる』と錯覚して参入する企業も多く、苦戦したのではないでしょうか。また、中国では日本のように整備工場を有するディーラー店舗を作らず、ショッピングモールの一角に展示スペースを設けるのが一般的。出店コストが比較的掛からないことから、安易な参入企業も増えたのでしょう」(中国車研究家・加藤ヒロト氏) 倒産企業と廃棄されるEVが増加する一方で、中国のEV市場は成長を続けている。伸びている限りは成功しているとの見方もあるが、宮崎氏は「今後は海外市場でも苦戦する可能性がある」と見る。 「乱立する中国製EVには、安全面などの警戒感が国際的にも高まりつつある。米国は関税を4倍となる100%に引き上げると発表しており、欧州も同調する流れになっています。もしそうなれば、今後はロシアや欧州のごく一部の国にしか売れない可能性もあります。最後まで生き残る企業は、数社だけでしょう」 膨らみ続けた「EVバブル」の崩壊が、いよいよ現実味を帯びてきた――。 『FRIDAY』2024年5月31日号より
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