『S&P500』『オルカン』絶好調は「円安」のおかげ…「円高」になったらどのくらい下がるのか?
通貨分散の効果が低い理由とは?
そもそも、投資先の国や地域、通貨が分散されているのに、ドル円レートの影響が9割近くに上る理由について、補足しておきたい。 円を、ドル以外の通貨と取引するとき、基本的には、まず円でドルを買い、そのドルを使ってもともと買いたかった通貨を買う。例えば、円でユーロを買う場合、円でドルを買って、そのドルでユーロを買うという手順だ。したがって、オルカンで日本以外の先進国や新興国に投資する際は、いったんドルを買うことになる。 何でこんな手順を踏むのかというと、円とドル以外の通貨の取引量は多くないので、直接、大量の買い注文を出すとレートが大きく変動してしまうからだ。流動性が高く、売買時の値幅が狭い基軸通貨のドルなら、どの通貨とも一定の取引量があるので、取引が安定しやすい。 なお、円→ドル→現地通貨と両替をして、現地通貨を保有することになっても、ドルの影響は受け続ける。為替市場では、例えば、「1ユーロ=165円」といったように、「ユーロ円」のレートは表示されるが、それは「ユーロ/ドル」と「ドル/円」を掛け合わせて算出した数値。ドル以外の通貨と円の組み合わせは「クロス円」と呼ばれるが、クロス円のレート自体がドル円レートに影響される。通貨を分散していても、ドル円レートの影響が強い背景だ。 オルカンの運用報告書(全体版)には、外貨建て資産の期末評価に使う通貨が記載されている。興味のある方は参照してほしい。 ◆長期投資のために知っておくべき投資信託の知識 最近、「NISAでオルカンに投資してます」という人が、身近にも目立って増えてきた。だが、為替相場の影響など、肝心の中身について理解している人は非常に少ない。たしかに、仕組みが分かったからといって運用成績が良くなるわけではないが、大事な資産を振り向けている商品として、最低限知っておくべき内容はある。 今後、過度の円安が修正されて円高方向に振れ、S&P500やオルカンの予想外の下落に直面することになっても、慌てないために必要だろう。 取材・文:松岡賢治 マネーライター、ファイナンシャルプランナー/証券会社のマーケットアナリストを経て、1996年に独立。ビジネス誌や経済誌を中心に金融、資産運用の記事を執筆。著書に『ロボアドバイザー投資1年目の教科書』『豊富な図解でよくわかる! キャッシュレス決済で絶対得する本 』。
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