低迷に苦しんだミスド、一時は店舗3割削減から復活にいたった戦略とは COOが明かした「1強」だからこその苦悩
ミスタードーナツの店舗の約8割は、ショーケースに並んだ商品をお客が自分で取るスタイル。コロナ禍では、衛生的に問題があるのではないかという声が上がった。ドーナツを1個ずつ袋に詰めるといった対策を取ったが、商品の味や見栄えに影響した。多額の費用がかかったものの、最終的にショーケースに扉を付けることにした。 若い世代をターゲットにした取り組みと、コロナ禍での衛生管理や持ち帰り需要の高まりが要因となり、業績は回復基調に転じた。国内の売上高は、2019年3月期の740億円から2024年3月期は1248億円と約1・7倍に伸びた。店舗数は2021年3月に961店だったが、2024年3月に1017店に上向いた。 ▽「ポスターと商品が違う」お客の不満解消に注力 好調の背景には、お客の不満を解消することに注力した取り組みが実を結んだことも挙げられるという。 お客の不満を集約すると、次の三つにまとめられた。
(1)近くにお店がない (2)欲しい商品がない (3)待ち時間が長い これらに対応するため、それまでは厨房付きの店舗ばかりだったが、厨房のない小型店を一部で導入。ネット注文のシステム開発も進めた。 消費者が飽きないように、次々と新しい商品を投入することにも注力している。人気商品の「ポン・デ・リング」が真っ白になった「白いポン・デ・リング」や、ミスタードーナツで初めてのカップ麺「家で食べるミスドの汁そば」は話題を呼んだ。 「いくら良い商品を作ったとしても店舗での再現力がなければお客さまにお渡しできない。数年前までは『ポスターに載っている商品と現物が違うんじゃないの』という声を結構いただいた。株主総会で言われたこともあった。技術を高めるため、人への投資に力を入れ、今ではほとんどそういった指摘がなくなった」という。 ▽53年続けたことの自負 和田氏は最近の状況について「人づくりと店づくりが好循環に入っている」と手応えを語る。「今後も事業環境の変化に一喜一憂せず、おいしいドーナツをお届けすることを愚直にやり続ける。今後は社会から応援される事業になっていきたい」。ミスタードーナツが日本に1号店を開いてから53年。社会から必要とされる事業になったと自負している。
× × × 和田 哲也(わだ・てつや)1962年大阪市生まれ。1986年にダスキンに入社した後、ほぼ一貫してミスタードーナツ事業に携わる。2020年6月から最高執行責任者(COO)。