低迷に苦しんだミスド、一時は店舗3割削減から復活にいたった戦略とは COOが明かした「1強」だからこその苦悩
日本のドーナツ市場を切り開いてきたミスタードーナツ。1971年に1号店を開店して以来、拡大してきたが、2010年代は苦戦が続いた。不採算店舗の閉店が相次ぎ、1300店を超えた店舗数は一時、3割減った。ここ数年は売り上げが回復に転じており、2024年3月期、5年ぶりに千店の大台を回復した。 【写真】「日本一のだがし売場」の店内 テニスコート10面分の広さに、5000種類のお菓子が…
コンビニ大手の参入や新型コロナウイルス禍といった大きな事業環境の変化もあった。低迷期をどのようにして乗り越えたのか。事業を統括するダスキン最高執行責任者(COO)の和田哲也氏(62)は成功体験からの脱却と、「1強」だからこその難しさを語った。(共同通信=松田大樹) ▽本部長就任時には低迷の兆候 和田氏は1986年にダスキンに入社した。ダスキンが手がけるレストランでアルバイトをしていたことがきっかけで入社を決めた。 「同期が70人ほどいて3分の1がミスタードーナツ、3分の2が(清掃用品のレンタルや販売といった)訪販事業に配属された。入社して初めてドーナツは油で揚げるというのを知ったくらい、それまでは縁がなかった」 店舗勤務に始まり、商品開発や海外展開などキャリアのほとんどをミスタードーナツで過ごすことになった。2015年には事業本部長に就任した。当時はコンビニ大手がドーナツ販売に参入したころだったが、低迷の兆候はその数年前から表れていた。
▽業績低迷の要因は「努力不足」 「当時は外食産業が価値の創出ではなく、価格競争に入っていた。私たちも 同じ様に、自分たちの価値を高めるという方向に行かなかった。100円均一セールに代表される期間限定のディスカウントをどんどんやって、違いが出せなくなっていった」 フランチャイズチェーン店を含めた売上高は2014年3月期の1030億円から、2019年3月期は740億円となり約3割も減少した。不採算店舗の閉店を進めたことで、国内店舗数は2014年3月の1350店から2021年3月には961店に減った。 「新しい価値を創造できないということは、お客の来店頻度も増えないし飽きられてしまう。われわれの努力が足りなかったということが、業績低迷の一番の大きな要因だった」 ▽過去の成功体験が足かせに 低迷を脱しようと2016年に経営戦略の転換を決めた。それまで30~40代の固定客が中心だったが、若い世代に焦点を当てることにした。