米輸出、初の100億円台 24年 日本食人気追い風
米の年間輸出額が100億円を突破したことが26日、分かった。財務省が同日公表した貿易統計によると、2024年1~11月の米の輸出額は、前年同期比2割増の106億円。日本食レストラン人気を追い風に、北米向けを中心に伸長した。政府が25年の目標とする、パックご飯などを含む米の輸出額(125億円)の達成も視野に入ってきた。 貿易統計によると24年1~11月に輸出された玄米や精米などの合計額は前年同期比22%増の106億2162万円、輸出量は同2%増の4万280トンだった。援助米なども含むが、農水省が年明け公表予定の商業ベースと近い数字になるとみられる。 地域別に見ると、北米向けが著しく伸びており、米国が同4割増の22億円、カナダが同5割増の5億円になった。主力のアジア向けでは、香港が29億円、シンガポールが12億円、台湾が9億円で、それぞれ同2割伸びた。 円安に加えて、すしやおにぎりなどを提供する日本食レストランの人気が輸出拡大の追い風になっている。現地レストランでは外国産米を使うケースも多い中、「日本産米は、冷めてもおいしいといった品質の高さで支持を高めている」(農水省)。外国産米から日本産米に切り替える業者もいるという。 国は、パックご飯や米粉などを含む米の輸出額について、25年に125億円に増やす目標を掲げている。同省によると、24年1~10月時点で106億円。パックご飯は、前年同期比5割増の11億円、米粉なども同7割増の1億円と伸びている。(鈴木雄太)
解説 品質強みに販路拡大を
政府が輸出の重点品目に位置付ける米の輸出額が100億円の大台を突破した。国内で需要減少が進む中で海外に販路を広げることは、稲作経営や農地を維持する上で必要だ。 一方で米輸出の現状を冷静に見たい。年間輸出量は4万トン程度で、国内生産量683万トンの1%未満だ。国産米の需給調整を委ねられる規模にもない。 高齢化や担い手不足から稲作の生産性向上は急務となる。ただ、低コスト生産でカリフォルニア産など外国産米と競争をしても勝ち目がない。日本産米は24年産で価格回復したことで、その価格差はむしろ拡大している。 農家所得を確保するには価格競争でなく、価値の提案が重要だ。冷めてもおいしいなど日本産の強みを生かして現地の中食・外食業者へアピールし、品質・価値を適切に評価する取引先を開拓すべきだ。(宗和知克)
日本農業新聞