沖縄で2度目、米軍基地めぐる「県民投票」とは? 坂東太郎のよく分かる時事用語
「勝敗ライン」はどこなのか
さて、今回の沖縄県民投票の「勝敗ライン」なんてものはあるのでしょうか。賛否はもちろん、投票率や知事選の結果との比較、場合によっては「どちらでもない」の票数あたりが議論になりそうです。 条例では、「国」に対して「埋め立て」の「県民の意思を的確に反映させることを目的とする」(1条)とあり、「知事はその結果を尊重しなければなら」ず、首相と米大統領へ結果を速やかに通知する(10条)と定めています。 玉城デニー沖縄県知事は、公約で「辺野古新基地建設反対」を掲げました。しかし当選後の2018年12月、国は埋め立て予定海域へ土砂を投入し、建設への動きを本格化させ始めました。県民投票条例の署名集めをした主体や議会与党は「玉城支持」なので、埋め立てを阻止して政府に移設先を考え直させるカードとして、反対多数の民意を得るための条例制定だったはず。ですから、もし賛成票の方が多ければ、墓穴を掘った形になるのは明らかです。賛成プラス「どちらでもない」が、反対を上回っても大打撃でしょう。 反対が多数となっても、投票率が低いと知事には厳しい結果となります。96年県民投票の6割、玉城氏が勝利した2018年沖縄県知事選挙の63%に匹敵する投票率となるか否か。 反対票の数が、昨年9月の知事選で玉城知事が得た約39万票に比肩するかどうかも注目されそうです。知事選で次点候補は辺野古移設の賛否を明らかにしていません。もし反対が39万票をかなり下回ったら、特に次点候補が得た約31万票にも届かなければ、知事選の勝因は決して辺野古ではなかった、例えば「遺志を受け継いだとされる翁長雄志前知事への同情票であった」などと賛成陣営から声が挙がるかもしれません。
---------------------------------------- ■坂東太郎(ばんどう・たろう) 毎日新聞記者などを経て、日本ニュース時事能力検定協会監事、十文字学園女子大学非常勤講師を務める。著書に『マスコミの秘密』『時事問題の裏技』『ニュースの歴史学』など