沖縄で2度目、米軍基地めぐる「県民投票」とは? 坂東太郎のよく分かる時事用語
法的拘束力がない2度の県民投票
名護市の市民投票でも分かるように、「条例」に基づく住民投票には法的拘束力がありません。これまで述べてきた96年沖縄県民投票、97年名護市民投票、今回の2019年沖縄県民投票、いずれも条例に基づくものです。 一般に「住民投票」と呼ばれるものには主に3種類あります。そのうち拘束力を持つのは「憲法に基づく」か「法律に基づく」かです。 憲法に基づく住民投票とは「一(つ)の地方公共団体のみに適用される特別法」の制定や憲法改正、最高裁判所裁判官の国民審査が該当します。法律に基づく投票の代表例は、地方自治法に定めのある都道府県知事・市町村長、及び議会議員の解職、地方議会の解散を求める直接請求があった場合です。一定の署名を期間内に集めれば投票が実施され、過半数の賛成で失職ないし解散が決まります。 それに対して、条例に基づく住民投票は、一定の署名を期間内に集めるところまでは法律に基づくものと同じですが、求めるのは住民投票条例の制定。条例の可否は地方議会で決するので、請求がなされても議会で否決される場合があり得ます。投票が実施されても結果に従う義務を明記した法律がないので、法的拘束力もありません。 つまり、今回行われる県民投票で仮に埋め立て反対票が多数を占めたとしても、法的には埋め立てをやめさせる力を持たないのです。よって、辺野古への移設計画を政府にやめさせる決定打にはなり得ません。 米軍基地をどこにつくるか、またつくらないかは安全保障に関わるテーマで、自治体の住民投票になじむのかという指摘もあります。確かに安全保障や外交は全国共通の課題なので、主に国(政府)の仕事でしょう。一方で、米軍基地の約7割が沖縄に集中している現状は明らかにいびつで、安全保障を「国民の平和と安全を守る」と捉えれば、県民(当然『国民』でもある)の「安全」の面から基地はもういらないと沖縄が意思表示する機会が設けられるのは、別におかしくないという見方もできます。