公的年金だけでは心もとない老後資金…NISA、iDeCoではなく「投資型年金保険」は老後の備えとしてあり?なし?
契約前に「お金のかかり時」を把握しておくことが大切
投資型年金保険は契約期間が長く、中途解約もしづらい商品です。途中で保険料が払えなくならないよう、「お金のかかり時」を把握しておくことが重要です。 Aさんご夫婦もライフプランを作成し、今後の収支をシミュレーションしたところ、子ども2人の高校入学から大学を卒業して独立するまでの期間が、「お金のかかり時」だとわかりました。子ども2人が大学生の時期には、投資型年金保険を除いた金融資産が300万円を下回ります。 シミュレーションでは、子どもが小学校から高校まで公立、大学は私立文系に進学することを想定しています。実際には、中学校や高校から私立に進学する、大学で理系に進学したり、一人暮しをしたりするなど、想定外の選択をすることもあるでしょう。その場合、さらに教育費がかかる可能性もあるため、手元資金が300万円を下回るのは心もとなく感じます。 子どもが小学生くらいまでは、一般的にはお金が貯めやすい時期だといわれています。まだ家計に余裕のある時期に保険加入を検討する場合、その時点での家計状況だけで大丈夫だと判断し、加入してしまうことがあります。長い人生のなかでは、どうしてもお金がかかる時期があります。加入時だけではなく、将来的にも保険料の支払いが継続可能か、長期的な視点で確認しましょう。
投資型年金保険の適正バランスの目安
投資型年金保険は老後の資金準備として活用しやすい商品と思われるかもしれません。なぜなら、あらかじめ受け取り開始年齢を決めておくことができ、資金計画を立てやすいからです。しかし、運用実績によって受取り金額が変動すること、中途解約しづらいことを踏まえ、資産全体に対して投資型年金保険の割合が高くなりすぎないよう注意しましょう。 Aさんご夫婦の場合、投資型年金保険が金融資産の50%以上を占めていました。参考までに金融広報中央委員会によると、将来のために蓄えている金融資産のうち、保険が占める割合は平均で資産全体の約20%です(参考:金融広報中央委員会「家計の金融行動に関する世論調査」[二人以上世帯調査](2023年))。平均データと比較しても、Aさんご夫婦の金融資産はバランスに偏りがあることがわかります。 Aさんご夫婦にもその旨を説明し、月3万円支払っている投資型年金保険を解約し、自由に払い戻しができる投資信託での積立投資(NISAを利用)に変更することにしました。すぐに現金化できる資産を増やすことで、手元資金が少なくなる不安も解消できました。 適正バランスを考えるにはライフプランを作り、全資産のバランスを見る必要がありますが、資産全体の約20%というのは1つの目安になりそうです。 少子高齢化が進む日本において、自助努力として老後資金の準備をすることは、ますます必要になるでしょう。投資型年金保険を活用するのであれば、保険の特徴を理解し、望まない途中解約で損をすることがないように、家計に合った無理のない保険料で加入するようにしましょう。 【監修】伊達有希子/ファイナンシャルプランナー(CFP、1級FP技能士)
南真理(AFP・2級FP技能士/証券外務員二種・一種/宅地建物取引士)