資源もヒトも持続可能な農業へ…“もったいない”を活用する実験農場 松下政経塾出身の異色農家が信じる未来
■麦芽のカスにキクラゲの菌床…不要なものを活用し未来につなぐ
林さんは、こうした現状を変えたいと「実験」を始めました。JR中央線沿いの土地を借り、スタッフと2人でスタートした農場では現在、1500坪で50種類ほどの野菜を育てています。
ある日、林さんが向かったのは、同じ春日井市内にあるクラフトビールの醸造所「バタフライブルワリー」です。
林さんがここで受け取ったのは、クラフトビールを作る際に出る大量の麦芽のカスです。
バタフライブルワリー代表の入谷公博さん: 「クラフトビールを作っていまして、麦芽を使い終わったものです。まだたっぷり栄養価はあるんですけど、何もしないと廃棄なので」 これまでは産業廃棄物として捨てられていましたが、林さんにとっては宝物です。
林さん: 「土を良くしてくれる魔法の素ですかね。僕らからすると本当に宝物」 麦芽のカスは絞った後でも栄養が豊富で、これを無料で回収した間伐材の木くずに混ぜるだけで、勢いよく湯気が出てきました。 林さん: 「おぉ~ええ香りや。モルトの甘い匂いが…。芯温はたぶん60~70度くらいあると思うんです」
こうして出来上がるのが「糸状菌」というキノコの仲間で、これを畑にまくことで、病気になりにくい元気な野菜ができるといいます。
そして、市内の別の会社からもお宝をもらっています。物流会社「ホンダロジコム」は、障がい者などを雇用して無農薬の“キクラゲ”を栽培していて、ここでいらなくなったキクラゲの菌床を毎月1トン以上回収し、畑にまいています。
林さん: 「我々の農業の基本は、地域で手にはいるものをいかに循環させていくのか。地域で厄介者だと思われているようなものも、実は使い方如何によっては貴重な資源に変わっていくんじゃないかな、地域にあるものを使って未来につなげていくようなことができないかと。世の中には不要なものはないんじゃないかなと思いますし、負荷をかけるようなやり方はどこか歪みが起きて、続かなくなるんじゃないかなと思っています」