JR中央線グリーン車導入で沿線住民の期待と懸念 「ゆっくり座って帰れるなら数百円は高くない」、一方で「遅延の拡大が心配」「先にホームドアの整備を」の声も
10月13日からJR中央線快速にグリーン車が導入された。現在は“無料お試し期間”ということで当該グリーン車両は大変な混雑ぶりだが、快適に移動できる車両の登場に沿線住民からは概ね喜びの声が上がっている。 【写真】中央線ホームに表示されたグリーン車の乗車口。グリーン車は2階にも多くの人が
20年以上、立川~神田駅間を通勤している会社員・Nさん(40代/男性)は、「やっと!という気持ち」だという。 「これまでお酒を飲んだ後、東海道線や横須賀線で帰る同僚が『今日はゆっくりしたいからグリーン車で帰ろう』と話すのを聞いて、中央線も結構長距離の路線なのに……と羨ましく思っていました。 中央線はトイレが付いたのもごく最近で、用を足すために途中下車したことも数知れませんが、そういった悩みも一気に解消です。ゆっくり座ってパソコンで仕事ができるし、充電も出来るなら1回数百円は高くない。グリーン車は正直メチャクチャ楽しみですね」 これによりJR東日本は、都心から放射線状に延びる東海道、総武、東北、常磐、中央の主要5方面のグリーン車導入を完了。中央線快速は混雑率ワースト5に入る路線だが、従来の10両編成に2両のグリーン車が加わって12両編成になることで、混雑率の緩和も期待されている。
遅延が更に増える懸念も
しかし、懸念が無いわけではない。首都圏の交通事情に詳しいライターの金子則男氏はこう話す。 「“中央線にもグリーン車を”という声はかなり昔からありましたが、問題は中央線の運転本数が非常に多いことです。他のグリーン車導入路線と比べ、中央線は段違いに運行密度が高く、ピーク時には2~3分間隔で列車が出ます。そのため遅延率も高く、首都圏でも屈指の遅延が多い路線となっています。大いなる懸念事項は、グリーン車導入で遅延がさらに増えることです。 まず予想されるのは、グリーン車の客が乗降に手間取ることです。グリーン車は2階建てで、大勢が一斉に降りるのは不可能。JR東日本は少しでも乗降がスムーズになるように“両開きドア”を採用しましたが、人間の心理として、高い料金を払った客は急ぎません。普通車両の乗降が終わっているのに、“グリーン車利用客の乗降終了待ち”になるケースも想定されます。 ホームで列車を待つ客も遅延リスクの1つです。東海道線などでは日常茶飯事の光景ですが、普通車に乗る列に並んだつもりで目の前にグリーン車が止まり、慌てて普通車の方に駆け出す客がよくいます。中央線でもこういった客が大量発生する可能性が高く、さらに困ったことに一番混む新宿駅はホームが非常に狭い。丁寧に注意を呼びかけないと、グリーン車が本格導入された折には、朝夕の新宿駅のホームはこれまで以上にグチャグチャになる可能性もあります」(金子氏。以下同) 他の路線であれば10秒や20秒ぐらい電車が遅れても後続列車に影響はないが、上述の通り中央線は、最短2分で次の列車がやって来る。列車が1本遅れれば、後ろの列車はどんどん遅れるのは当たり前。ただでさえ遅れがちな路線に、また1つ遅延リスクが増えるということだ。また、快適性・利便性にも疑問符は付く。