旅館の部屋に“茶と茶菓子”が用意されるのはなぜ?「もてなし以外の確固たる理由がある」と評論家
旅の楽しみのひとつといえばホテルや旅館などの宿泊先です。宿泊施設が様々なサービスでしのぎを削るなか、特に旅館で見られるのが「部屋に置いてあるお茶&お茶菓子」です。ほっこりと心を癒してくれる嬉しいサービスですが、そこには意外な理由があるとのこと。ホテル・旅館業界に詳しいホテル評論家の瀧澤信秋さんに話を聞きました。 【写真】ホテル評論家がおすすめする「茶菓子」 ☆☆☆☆ 旅館の茶菓子は「お着き菓子」とも呼ばれます。瀧澤さんによれば現在のお着き菓子はそれぞれのホテルや旅館によるサービスの競争として提供されている意味合いが強いそうですが、本来は別の意味があったとのこと。 「一つ目は、『温泉に入るための準備』です。旅で移動してきて血糖値が低下し空腹と水分不足のまま入浴してしまうと貧血や立ちくらみを起こし倒れてしまう可能性があります。それを防ぐためにも、入浴前に水分補給と小腹を満たす目的で提供されています」(瀧澤さん) 二つ目は“販促”が理由となっているとのこと。「お着き菓子はその地元の銘菓や旅館の売店で販売されているものが採用されていることが多く、サービスをしつつそれらの販売促進に繋げる狙いもあります。また、販促という意味合いは薄くとも、ご当地をアピールできるコンテンツになっている場合もあります」と瀧澤さんは説明。 ただし、これらはあくまで本来の理由であり、前述の通りに現在は「サービス競争」として力を入れるホテルや旅館が多いとのことです。 「ホテルや旅館の数が増えて競争が高まる中、お着き菓子やドリンクなどウェルカムサービスに力を入れる宿が増えています。手軽に導入しやすいことや、他の宿との差別化しやすいことが理由としてあげられます」(瀧澤さん) 各ホテルや旅館がしのぎを削って行っているという、お着き菓子やウェルカムサービス。年間でホテルや旅館に320泊しているという瀧澤信秋さんが「おっ」と思ったホテルや旅館を教えてもらいました。 (1)ホテル ココ・グラン高崎(群馬県高崎市) 【瀧澤さん】高崎で多角展開する木本製菓が運営しているハイクラス・ビジネスホテルであり、同社の系列である清月堂のお菓子『旅がらす』が部屋に用意されています。ビジネスホテルでありながら「群馬といえばコレ!」という銘菓が楽しめるのは嬉しいポイントです。 ⬛︎仙渓園月岡ホテル(山形県上山市) 【瀧澤さん】山形県のかみのやま温泉にある創業380年の老舗宿です。部屋に用意されているのは上山名物の『中條(ナカジョウ)饅頭」』に加えて、特別室には『クロモジ』や『和薄荷』がルームサービスのお茶として用意されています。ラウンジや湯上がりサロンなどでも『クロモジ』をはじめ『朝摘み和ハッカ』のデトックスウォーターのサービスが。こちらの和薄荷は自家畑でスタッフが栽培しているもので、和薄荷に関して客室にご用意しているものは、コーヒーに入れて香りを楽しんだり、そのままお茶としても飲むことができるのだそうです。こうした飲食外のサービスも地域色を感じられる嬉しいポイントですね。 ☆☆☆☆ 今年の9月は3連休が2回あるなど旅行にはうってつけ。宿泊先を決める際にはお着き菓子やウェルカムサービスに注目してみても良いかもしれません。 (取材・文=宮田智也)
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