加害者の今を知ってしまった…「娘の未来は絶たれたのに」中2いじめ、遺族の憤りと煩悶 学校推薦で高校進学、実業団選手に。謝罪はないまま
後日、第三者委の報告書を受け取る際、両親は委員会のメンバーから口頭でこう伝えられた。いじめ行為について12人の多くが自ら話すことはなく、聞き取りを最後まで拒んだ生徒もいる、と。両親の元には「いじめた人たちが『自分たちのせいではない』と言っていた」との同級生の証言も寄せられていた。 ▽不十分な指導、そして推薦へ 「なぜ娘をいじめたのか」。両親はその後も一貫して学校や教育委員会に12人に対する指導を求めてきた。こうした要望を受け、市は加害者への指導計画を策定。「自らの言葉で事案を振り返らせ、反省の気持ちを継続して持たせる」方針を両親に提示してきた。 しかし、その指導内容は遺族の納得とはほど遠かった。市教委に設置されている「少年愛護センター」の所長がまとめた「関係生徒、保護者説明及び指導概要に関する報告」は、指導日時をまとめた表を入れてA4用紙3枚分しかない。それによると、指導は2017年12月~18年2月、各生徒に1~3回行われ、「涙を流していた」「嫌な思いをさせたのかもしれないと話した」と指導時の様子が数行書かれている程度。中には「あだ名で呼んだことはない」と、いじめ行為を否定する言い分も含まれていた。 加害生徒らの卒業が間近に迫っていた。両親は「反省もないままに進学してしまうのではないか」と焦りを感じていた。そうした疑念の中で持ち上がったのが学校推薦の問題だ。スポーツなど特定の分野に優れている生徒を学校として進学先に推すことが多いが、何よりもこれまでの学校生活から生徒の「人格が優れている」と認められることが前提のはずだ。
「まさか推薦してないでしょうね」。18年3月、弁護士事務所で両親は関係教員や市教委職員に問いかけている。だがその時に回答はなく、市教委側は年度が変わった4月になって推薦した事実を正式に認めた。面談の場で「加害者だから推薦しないという基準はない」と伝えてきた。 加害側が堂々と人生を歩んでいる事実に納得できるはずがなかった。当時の音声データには母親の悲痛な叫びが記録されている。「人を死に追い詰めた人をどうして推薦するの?」「どこまで私たちを苦しめたら気が済むの?」。父親も「(加害者)本人のためにもよくないでしょう?」とたまらず諭している。当時の校長は「中学を卒業したら終わりとは思っていない」と、この先も加害者への指導を続けるかのような発言をしているが、その後、学校側からさらなる指導について何も報告はない。 あらためて今年6月、市教委の担当者にどう指導してきたのか取材したが、裁判で係争中であることを理由に「答えられない」とし、推薦については「具体的に誰とは答えられないが、総合的に判断して出す人には出したということです」と答えた。 ▽優しい娘、絶たれてしまった夢