大手証券が相次ぎシニア社員の給与や福利厚生アップ-人材確保を重視
(ブルームバーグ): 国内大手証券が相次ぎ60歳以上のシニア世代の従業員の待遇改善に力を入れている。給与水準の引き上げや福利厚生の向上などが柱で、急速な高齢化で人材不足が懸念される中、人材の確保に向けて動いている姿が改めて浮き彫りになった。
大和証券グループ本社は60歳以上の社員の処遇をここ2年間で1人当たり平均15%引き上げた。野村ホールディングスでは昨年、若い世代と同様に傷病休暇を福利厚生に追加した。SMBC日興証券はシニア世代も含めた社員の給与水準を2年連続でアップした。
野村HDの広報担当者は、ブルームバーグの取材に、60歳以上の社員が持つさまざまな経験やスキルセットは、当社のビジネスにとって重要と説明。一例として、金利のある世界での経験を持つ社員が、若い世代には想像しにくい情報を提供してくれることもある、と述べた。
少子高齢化が進む中、日本企業にとって労働力の確保は急務だ。定年退職後の再雇用では、給与の大幅な引き下げや役割の縮小に直面する場合が多かったが、経団連では企業は賃金を業績や職責に見合ったものにするなど、高齢者のさらなる活躍推進に向けて取り組むべきだとする報告書を出した。
ニッセイ基礎研究所ジェロントロジー推進室の前田展弘上席研究員は、シニア人材を「改めて再戦力化していくことが企業の存続・発展に向けて不可欠と考えられる」と指摘。「企業にとって、人手不足の問題が今後ますます深刻化することが予測される」としている。
総務省のデータによると、金融・保険業界では2023年に60歳以上の従業員数が全体の14%を占め、比較可能なデータ上で過去最高を記録した。一方、02年に36%を占めていた20歳から34歳までの割合は26%に減少した。
国内証券にとって、シニア人材の確保は特に重要な課題となりそうだ。長く続いた超低金利政策の転換で低迷期を脱し、ようやく活発な取引を取り戻した国債市場では、金利について熟知した人材に強いニーズがある。