カブス・今永昇太はなぜ失点しないのか…レジェンドが徹底分析! 「無双の秘密」は変化球にあった!
メジャーリーグの長い歴史をたどっても、これほど鮮烈なデビューを飾った投手は稀だろう。 【連続写真で丸わかり】動作解析の専門家が徹底解説…!今永昇太の「回転スピン投法」 カブスの今永昇太(30)が、開幕から圧巻の投球を続けている。 「5月22日時点で9試合に登板、53.2イニングを投げて自責点は5、防御率は驚異の0.84。一度も敗戦を喫しておらず、奪三振はイニング数を上回る58という超人的な内容で、早くも新人王とサイ・ヤング賞の候補として名前が挙がり始めました。シーズン前は、投手として史上最高額の12年総額約463億円という契約を結んだドジャースの山本由伸(25)の陰に隠れていましたが、現在では今永が主役です」(スポーツ紙デスク) 身長約178㎝でストレートの平均球速は150㎞/hに満たないがスピンが利いており、活躍の要因を直球に見出すメディアは多い。だが、現地記者は異を唱える。 「たしかにイマナガのフォーシームは一級品。しかし、メジャーには100マイル(約161㎞/h)を超える剛球を投げる投手が数えきれないほどいます。それでも、彼らの多くは思うような成績を残せていない。真っすぐだけで好成績を収められるほど、メジャーは甘くない」 では、今永はなぜ失点しないのか。元ヤクルトのエースである館山昌平氏は、「″角のないスライダー″をコースに投げ切れていることが大きい」と話す。 「通常の投手のスライダーには、クッと曲がりだす地点――″角″がある。ところが、今永のスライダーにはそれがなく、滑らかに曲がる。しかも回転軸を変えて、曲がり始めるタイミングや変化量を自由自在に操れるのです。カウント球、小さく曲がって打者を差し込むスライダー、ボールゾーンから大きく曲げてストライクゾーンに入るスライダー、そして空振りを取るためのタテ変化を入れたストライクからボールになるスライダーの4種類を投げ分けている。 コントロールも抜群にいい。古巣のDeNAでは、ラミレス監督のころから左投手は右打者のインコースに投げ切れないと、使ってもらえなかった。本拠地の横浜スタジアムは狭く、浜風もあってホームランが出やすいからです。手足の長いメジャーの打者はベースから離れて立つので、インサイドが広くなる。おかげでどんどん投げ込めています。そこを意識させることで奥行きのあるチェンジアップがより効果的になっている」 変化球の制球力を生んでいるのは、日本人特有の理想的な投球フォームだ。 「上半身は力感がなく、ゆったりと体重移動して、瞬(またた)く間にリリースする。メジャーの投手には珍しい、いわば古武術のような独特のフォームです。しかも、打者から見ると真っすぐは上投げの軌道なのに、スライダー、チェンジアップは横投げの投手のような軌道の変化をする。打者はイメージしづらく、攻略は非常に困難です」(館山氏) 少ない球種を極限まで磨き抜く――。まさにサムライと呼ぶべき今永の無双はまだまだ続く。 『FRIDAY』2024年6月7・14日号より
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