【ツレヅレハナコさんのフルオーダー台所拝見】夫の看取りを経て「今までの自分ならやらないことばかりしてきた」理由
引き続き、ツレヅレハナコさんのインタビューをお届けします。 取材はツレヅレさんの自宅で行われました。2020年にツレヅレさんが自分で建てたこの家は、1階に土間を備えた玄関ポーチと仕事部屋、2階にはリビングと台所があります。日当たりのいいリビングはあたたかく、台所は北側にありどこか隠れ家のような雰囲気が漂います(インタビュー前編に写真掲載)。台所に一歩足を踏み入れると、台所道具や愛用の食材がぎっしりと並び、新しいのに不思議と使い込まれた居心地の良さを感じます。 ツレヅレさんの著書は食にまつわるものがほとんどですが、2020年に出した本『女ひとり、家を建てる』(河出書房新社)は違います。住み慣れた賃貸マンションから卒業し、フルオーダーで家を建てる奮闘を記録した一冊です。 後半では、建築家との偶然の出会いから建てた一軒家完成までの物語と、37歳の時にガンで亡くした夫への思いをお聞きします。「自分はこうである」と決めつけることをやめ、新しいことに挑戦し続けた10年。ジム通い、免許取得、いくつになっても人は変わることができると教えてくれます。(この記事は全2回の第2回目です)
一生賃貸でいいと思っていたので、まさか自分が家を建てるとは思ってもいなかった
「一生賃貸でいいと思っていたので、まさか家を建てるとは思ってもいませんでした。おそらく結婚はしないから住むのは1人だし、フリーランスだから家で仕事することになるだろう、と。知り合いの建築家さんに“高い家賃を払うのはもったいない”“中古マンションを買った方がいいのでは”と言われたことがきっかけでした。 で、探してみたものの理想的な物件が見つからず、希望の条件だけははっきりしていたので“じゃあ自分で建ててもいいのでは?”と提案してくれました。“私に家が建てられるんだ!”と驚きつつ“すべてオーダーできるなんて面白そう!”と思い、決断しました」
台所が好き過ぎて、台所に住みたい! こだわりをぎゅっと詰めたシステムキッチンをフルオーダー
建築家との出会いから4ヵ月後には理想の土地と出会い、1年5ヵ月後には新居が完成。ツレヅレさんが長年“台所に住みたい”と言っていた願いを実現した台所が完成しました。場所は2階北側の奥、横からやわらかい光が入る採光窓、重厚感のある総ステンレスのシステムキッチンはフルオーダーです。ステンレスは北海道の工場にまで足を運び、仕上がる工程まで見守りました。 「最近のキッチンは家の中心部の明るい場所に置き、人と会話ができるアイランド型がトレンドですが、私は料理に集中したいから奥まったクローズドのスタイルが好み。料理や作業がしやすいようL字型の広い作業台が欲しくて、かつ天板の奥行きは深めの75cmにしたい。コンロの右側の空きスペースは30cmにするなど、たくさんのリクエストを盛り込みました」 他にも、コンロの高さをシンクより5cm低くする、シンクは洗い物と野菜を分けられるよう2槽式に。シンクの上の飾り棚には、ほこりがたまらないようにアクリル板の引き戸を設置。これらのアイデアは、ツレヅレさんが仕事を通じてたくさんの台所を見てきたからこそ学んだことでした。