ネットの誹謗中傷、「軽い気持ち」でも被害者の傷は軽くならない。ドラマ『しょせん他人事ですから』が伝える真理
オリンピック中の誹謗中傷は8500件超
先日、パリオリンピックが閉幕しましたが、選手への誹謗中傷が相次ぎました。国際オリンピック委員会(IOC)の選手委員会は8月18日、パリオリンピック期間中に選手や関係者に対して、オンライン上で8500件を超える誹謗中傷の投稿が確認されたと発表しました。 先日最終回を迎えたドラマ『しょせん他人事(ひとごと)ですから ~とある弁護士の本音の仕事~』(テレビ東京系、原作:左藤真通/作画:富士屋カツヒト/監修:清水陽平(法律事務所アルシエン)/白泉社『黒蜜』連載)は、社会問題となっている「誹謗中傷」をテーマにした作品です。 主人公の保田理(中島健人)は、ネット炎上、SNSトラブル、誹謗中傷など、インターネットのトラブルを専門に扱う弁護士。甘いものに目がなく、「他人事」をモットーに掲げ、一切のおべっかを言わないという一風変わり者ですが、ネットトラブルへの専門知識は卓越しており、超現実路線で問題解決へと導く敏腕弁護士です。パラリーガルの加賀見灯(白石聖)と共に、数々のネットトラブルに立ち向かっていきます。 さまざまな事例を元に、情報開示請求など、ネットトラブルが起きた時の対応のプロセスがわかりやすく紹介される画期的なドラマです。
未成年者の「荒らし」にどう対処すべきか
6・7話「中学生配信荒らし編」では、保田と加賀見の元に、中学生の西村優希(斎藤汰鷹)が訪れます。優希はゲーム配信者のあじぇる(瀧七海)の配信を荒らした結果、情報開示請求されそうになっており、親にもバレたくない、情報開示請求されたくない、と言います。 しかし、安田は未成年からの依頼は保護者の同意が必要で、この場合情報開示請求は阻止できない、と伝えます。優希は安田をインチキと決めつけ、クソ弁護士! と捨て台詞を吐いて去っていきます。優希は他の弁護士に泣きつきますが、結局親の知るところとなり、情報開示請求され、1週間以内に150万円払えという要求が。
誰かの「軽いノリ」で、誰かの人生が狂わされる
優希は弁護士に、そんなに酷いことはしていないと言っていましたが、実態は違いました。優希はあじぇるの配信中に、コメントで「パンツ売って」「ここで脱げや」など卑猥な言葉を大量に書き込み、ブロックされても新たなアカウントで書き込んだだけでなく、掲示板に書かれていたあじぇるの住所を晒し、DMであじぇるの自宅の前の画像を送りつけていたのです。 あじぇるは身の危険を感じ、パニック発作を起こしていました。 優希は再び安田の元を訪れ、父親の西村和徳(勝村政信)と、あじぇるに直接謝罪に行くことになりました。優希はあじぇるの前で謝罪文を読み上げますが、当たり障りのない文章で、それを聞いたあじぇるは激昂します。 「何が悪いか本当にわかってる?」「名誉棄損ってどういう意味か言ってみなよ」とあじぇるは問いかけますが、優希は「あじぇるさんを嫌な気持ちにさせたこと」としか答えられません。あじぇるは「気持ちの問題なの?」「なんで誹謗中傷してきたの。理由を言って」と問い詰めますが、優希は「えっと、ノリっていうか。面白いと思って」と力なく答えます。