AB二地点間を行きは時速30、帰りは時速50で往復する車。AB二地点間の距離が不明でも、平均速度は計算できる？
せっかく苦労して答えに辿りついたのに、学校の先生から「その解き方ではダメ。この公式以外の解き方は認めない」なんて注意された経験はないだろうか。『昔は解けたのに……大人のための算数力講義』(講談社+新書)著者の芳沢光雄氏は、こうした「心ない」教え方が、算数・数学嫌いの大人を生んでいると指摘する。 【漫画】月500時間、時給340円…雇われ店長が明かす「過酷すぎるコンビニ勤務」 大人のための算数力講義 第34回 『直径22cmの球体がピッタリ収まった立方体の体積は？ 「全国学力テスト」であなたの「算数力」をチェック！』より続く
算数・数学こそ「心」が大切
多くの人達は、「算数・数学は所詮計算で、誰がやっても答えは同じだから、算数・数学は心とは無関係」と思うようである。 そこで、本稿では「算数・数学こそ心が大切」だということを述べたい。 「心」を持たない算数・数学教育が「算数嫌い」「数学嫌い」を生む原因になっていると筆者は考えているからだ。 最初に拙著『昔は解けたのに……・大人のための算数力講義』(講談社+新書)の本文に載せた内容から、次の例題を考えてみよう。 例題AB二地点間を往復する車がある。AからBまでの行きが時速30km、BからAまでの帰りが時速50kmで走る。この車の往復の平均速度を求めよ。 この問題を見ると、「AB二地点間の距離が与えられてないから、答えは求まらないのではないか」と思う人が少なくない。 そのように思う方を主な対象として、解説を授業ふうに述べよう。なお、本記事はWEB上で掲載されるため、分数表記を「 / 」としたことから、若干読みづらくなっていることをお許し願いたい。
往復の距離がわかったうえで、平均速度を求める場合
解説とりあえず、AB二地点間の距離が150kmとして考えてみましょう。このとき、行きと帰りの走行時間は以下のように求まります。 行き:150÷30=5(時間) 帰り:150÷50=3(時間) 行きと帰りで合わせて8時間かかります。もちろん、往復の合計距離は150を2倍した300kmです。 さて、「平均速度」というものは「同じ所要時間で、全体を同じ速度にならす」考え方です。この場合の「往復の平均速度」を考えると、往復の距離300kmを8時間で走行する場合の一定の速さのことになります。そこで、 300÷8=37.5(km/時) と計算して、往復の平均速度は、時速37.5kmとなります。
