明日J開幕。ガンバとレッズのV争いに常勝クラブ時代到来への期待
2シーズン連続で無冠に終わったアントラーズだが、その間にボランチの柴崎岳を筆頭に昌子源と植田直通の両センターバック、攻撃的MFの土居聖真、FWカイオらが台頭。フロントも若手育成に定評があるトニーニョ・セレーゾ監督を復帰させ、世代交代を強力に推し進めてきた。 いわば過渡期にあった昨シーズンは、最終的にガンバと勝ち点3差の3位でフィニッシュするなど潜在能力の高さを垣間見せた。リーグ最多のリーグ優勝7回、ナビスコカップと天皇杯を合わせて通算16個ものタイトルを獲得してきた伝統は、柴崎を中心とする世代に完全に受け継がれたと言っていい。水沼氏はアントラーズのぶれない強化方針が最大の武器だと指摘する。 「ジーコイズムに代表されるフィロソフィーが、クラブにしっかりと息づいている。ブラジル路線とフォーメーションは一貫して変わらないし、こういうサッカーをして欲しいというリクエストにしっかり応えられる監督をブラジルから招聘してくる。歴代の監督によってスタイルが変わらないという点で、アントラーズは極めて希有なチームと言っていい。ガンバもある意味で変わらないスタイルができつつあるけれども、遠藤保仁の存在に負っている部分も大きい。レッズも監督次第の部分があるという点で、アントラーズのスタンスは高く評価していい」 近年は日本勢が苦戦を強いられ続けているACLをレッズは2007年シーズンに、ガンバは2008年シーズンに制した。アントラーズは2007年シーズンから前人未到のリーグ3連覇を達成するなど、Jリーグの歴史にそれぞれ輝く金字塔を打ち立ててきた。 翌2010年シーズンから名古屋グランパス、柏レイソル、連覇を達成したサンフレッチェ広島、そしてガンバが頂点に立つなど、J1は群雄割拠の戦国時代の様相を呈してきた。どこが勝つのかがわからない魅力とスリリング感は、開幕ダッシュに成功したチームが優位に立てる短期決戦の2ステージ制の復活でさらに高まる可能性もある。 それでも、産声をあげてから23年目となるJリーグがもうひとつ上のレベルに到達するには、水沼氏が指摘するようにけん引役となる常勝軍団が生まれて、その背中を追う他のクラブが創意工夫を凝らして対峙する構図が求められる段階に差しかかっていると言っていい。 開幕戦のカードはガンバが強豪クラブへの階段を確実に上がっているFC東京をホームに、レッズはアウェーで2シーズンぶりのJ1挑戦に捲土重来を期す湘南ベルマーレと、アントラーズは同じくアウェーで昨シーズン終盤までJ1残留を争ったエスパルスと対峙する。 ファーストステージの覇権の行方を占う意味でも、楽しみな顔合わせとなったと言っていい。 (文責・藤江直人/スポーツライター)