警鐘(12月20日)
ウクライナ紛争が影を落としているという。生産国ロシアの情勢が不安定となり、金属の価格が高騰している。新型コロナ禍が明けて生産活動が活発に。半導体に使われる銅の値段が特に上がっている▼ご時世を反映してか、金属盗が後を絶たない。警察庁は今年1月から10月までの全国の認知件数(暫定値)を基に、今年の被害を2万1470件と推計した。過去最多だった前年の1・3倍に当たる。太陽光発電所の送電用銅線ケーブルから、青銅や真ちゅうでできた橋名板、鉄製の側溝ふたまで。まさに手当たり次第の図が浮かぶ▼とりわけ寺院の被害には嘆息する。小野町の寺で11月上旬、半鐘や仏像が持ち去られた。近隣での受難を聞き、檀家[だんか]が万一に備えようと、センサー照明の設置を決めたばかりだった。「罰当たり」「新年を迎えられない」。総代は憤る。失ったのは財物としての価値だけではないだろう。地域社会の安寧まで侵されたようで、憤りが募る▼誰がいったい、いつ、何故に…。神仏をも恐れぬ振る舞いに、心の荒廃が透けて見える。年の瀬が迫る。煩悩を消し去る百八つの響きが、道を踏み外す不届き者に警鐘として伝わるよう願う。<2024・12・20>