【GQ読書案内】オリンピックとアスリートを考える3冊
LGBTQアスリートの声
田澤健一郎『わたしたち、体育会系LGBTQです 9人のアスリートが告白する「恋」と「勝負」と「生きづらさ」』(監修=岡田桂、集英社インターナショナル) 前回の東京オリンピック2020には、過去最多の1万1420人の選手が参加した。またLGBTQであることを公表したアスリート数も185人で、これも過去最多だったという。しかしそれでも、その中に日本人選手はいないそうだ。 本書は、スポーツ現場を長年取材してきた田澤健一郎さんがまとめたLGBTQアスリートたちの9つの物語に、監修者の岡田桂さんとの対談を付加したもの。「体育会」で性的マイノリティの選手は自分の「性」を隠して辛抱・我慢しているのか。「性」は競技の強さに影響するか。アスリートならではの恋愛事情、家族・友達との人間関係は……。当事者でも研究者でもない立場から描かれている点は、大きな特徴だろう。 以前、雑誌『エトセトラ 特集スポーツとジェンダー』(etc.books、2021)で読んだ、井谷聡子さんの「なぜ自分の身体と『いい関係』を築くのがこれほど難しいのだろう」という言葉がずっと心に残っている。スポーツとは本来、自分の心身に向き合うための手段であり、チームメイトやゲーム相手とのコミュニケーションの場なのだと思う。そこにジェンダーは関係がないはずだ。 LGBTQという言葉は広まったけれど、日本のスポーツ界は今もマッチョで差別的だ。しかしそんな中でも、本書を含むこうした書籍が増えつつあることを、まずは伝えたい。また非常に読みやすく書かれているので、体育や部活など大人以上にスポーツとジェンダーに触れる機会がある若い人たちに届いてほしいと思う。
贄川 雪(にえかわ ゆき) 編集者。本屋plateau booksの選書と企画担当、ときどき店番(主に金曜日にいます)。 本屋plateau books(プラトーブックス) 建築事務所「東京建築PLUS」が週末のみ営む本屋。70年代から精肉店として使われていた空間を自らリノベーションし、2019年3月にオープン。ドリップコーヒーを味わいながら、本を読むことができる。 住所:東京都文京区白山5-1-15 ラークヒルズ文京白山2階(都営三田線白山駅A1出口より徒歩5分) 営業日:金・土・日・祝祭日 12:00-18:00 WEB:https://plateau-books.com/ SNS:@plateau_books 編集・神谷 晃(GQ)