中国政府、EUの「EV追加関税」に対抗措置を表明 「大排気量エンジン車」の関税引き上げを示唆
中国政府は大排気量のエンジン車を対象に、輸入車の関税引き上げを検討している。10月8日、中国商務省の報道官が明らかにした。 【写真】欧州委員会のドムブロウスキス上級副委員長(貿易担当)と会談する中国の王文涛商務相 その4日前の10月4日、欧州連合(EU)の加盟27カ国は中国製EV(電気自動車)に追加関税を課すという欧州委員会(訳注:EUの政策執行機関)の提案について投票を実施。その結果、提案は可決され11月からの追加関税の適用が決まった。 こうした経緯から、政府系シンクタンクである中国汽車戦略政策研究中心の専門家の劉艶氏は、財新記者の取材に対して「大排気量エンジン車の関税引き上げはEUへの対抗措置である可能性が高い」との見方を示した。
■自主規制の交渉は難航 中国商務省は10月4日の時点で、中国製EVの輸出価格に下限を定めるなどの(追加関税の)代替案についてEUとの協議を継続しており、10月7日から新ラウンドの交渉に入るとしていた。 同省に近い関係者によれば、商務省報道官が10月8日に大排気量エンジン車の関税引き上げに言及したことは、7日のEUとの交渉が不調に終わったことを暗示しているという。 前出の劉氏は、中国側の自主規制を通じた妥協が成立しない場合、「中国とEUの双方が関税引き上げに動くのは避けられない」と指摘する。
外国製の輸入車に対する中国の関税率は、現時点では15%だ。仮に大排気量エンジン車の関税を上げる場合、中国商務省は関連業界の意見を参考に税率を25%に引き上げると予想されている。 自動車販売の業界団体、全国乗用車市場信息聯席会の崔東樹・秘書長が示したデータによれば、2024年1月から8月までの期間に中国がEUから輸入した排気量2500cc以上の自動車は合計10万6000台、金額ベースで102億ドル(約1兆5099億円)に上った。
それらに対する関税を中国政府が引き上げれば、ヨーロッパの自動車メーカーの対中輸出が打撃を受けるのは避けられない。 ■対EU投資を中国政府が制限も 一方、中国の自動車メーカーの間には、EUの追加関税の影響を避けるためにEU域内での現地生産を模索する動きがある。そんな中、10月4日のEUの投票で追加関税に賛成した国々については、中国メーカーによる投資を中国政府が認めないという見方も出てきた。 具体的には、賛成票を投じたのはイタリア、フランス、オランダ、エストニア、リトアニア、ラトビア、ポーランド、デンマーク、ブルガリア、アイルランドの10カ国だった。