五十嵐耕平監督作『SUPER HAPPY FOREVER』から考える「記憶」
今回の『SUPER HAPPY FOREVER』も、今年8月末から開催された第81回ベネチア国際映画祭ベニス・デイズ部門でオープニング作品として選出されるという華々しいスタートを切っており、日本でも9月から順次国内上映が展開されてきた本作が、ついに九州にも上陸した、というわけです。 ■私たちの〈忘れたくない瞬間〉とは? あなたの人生のなかの〈忘れたくない瞬間〉とは、どんな場面ですか? 誰かにとっては受験の合格や就職が決まった瞬間かもしれないし、また誰かにとっては大切な人へのプロポーズが実った瞬間かもしれない。だけど、それと同じくらいの方がもしかしたら、そうしたいわゆる「特別な場面」とは異なる、とるにたらない、他愛のない場面を思い出したのではないかと思います。 僕もいまパッとその質問を向けられたときに即座に思いついたのは、妻と娘2人がいつものように夕方リビングのテーブルに揃って、皆でごはんとおしゃべりが始まるような風景でした。 この映画は、妻を失ってしまった佐野という男、そしてもうこの世にはいない妻の凪、そして彼らの人生にふとしたかたちで関わっていたベトナム人のホテル従業員・アンという3人の物語を中心に展開されていきますが、映画は彼らの「とりとめのない時間」をじっと見つめていくような丁寧な視線に一貫されています。 妻の凪役を演じた女優の山本奈衣瑠さんは本作の魅力を問われたインタビューで「タバコを忘れたり、ライターを拾ったり、誰しも生きている中でする所作のひとつひとつが後の世界にも繋がっている、そういう面白さの残った作品だと思います」と語っています。 僕らの普段の日常のなかにおいても、意識にも上らず、記憶にも残っていないはずのひとつひとつの振る舞いが、実は後から振り返ったときには自分自身にとっても、そして自分と関わりを持った誰かにとっても、忘れられない、忘れたくない特別な瞬間になっているようなことはあるのだと思います。
【関連記事】
- 将来の総理候補が落選した理由~裏金問題だけではない 自民・武田良太氏(56) 3つの敗因
- 15年以上に及ぶ路上生活と売春 ”睡眠不足になるほど客をとった” 姉への強盗殺人罪に問われた妹(52) 収入はほぼ知人の女に送金と証言 ふたりの不可解な関係
- 「言うことを聞かないと殺される」12歳女子児童に性的暴行加えた20歳の男 通学路で起きた卑劣な犯罪に、判決は懲役6年6か月
- 「財布がなくなった」女子高校生の相談にゲームセンターの店長がとった”とっさの判断”「靴をみました」
- 「妻には言わないでほしい」 口論の引き金は”支払われなかった740万円の手付金” 小学校教員の妻(当時35)を殺害した罪に問われた夫(42) 事件直前にマンション購入めぐるトラブル