国民民主「178万円」への引き上げ譲らず 自公国税調は平行線、宙に浮く財源問題
年収103万円を超えると所得税が発生する「103万円の壁」を巡り、自民、公明、国民民主3党の協議が平行線をたどっている。6日行われた3党の税制調査会幹部の協議でも、非課税枠を178万円まで引き上げることにこだわる国民民主と、慎重な自公の溝は埋まらなかった。政府・与党は年内に令和7年度税制改正大綱をまとめる方針だが、財源問題は宙に浮いたままだ。 「地方税については、いろいろな跳ね返りがある」。同日の会合後、自民税調の宮沢洋一会長は記者団にこう語り、地方の税収減に十分配慮する必要があるとの認識を示した。3党は会合で、国税である所得税の議論を先に進めると確認した。 政府試算では、非課税枠が国民民主の要望通り178万円に拡大すると国・地方合わせて7兆~8兆円程度の税収減になる。うち約4兆円が地方の減収分だ。所得税の税収の約3分の1は地方交付税の財源に充てられることから、「実質的には5兆円程度が地方の減収分といえる」(財務省関係者)との見方もある。 このため地方では、大規模な財源不足に伴う社会福祉やごみ処理といった行政サービスの低下への懸念が強まっている。 6日の3党協議では、国民民主から地方交付税に対する国の手当てを厚くして穴埋めできないかとの質問が出たという。宮沢氏は「国の財政も極めて厳しい」と指摘し、困難との見解を示した。 仮に地方税である住民税の非課税枠も引き上げられて地方自治体が財源不足に陥った場合、通常は自治体が臨時財政対策債(赤字地方債)を発行して資金を調達する。返済資金は国が負担するものの、自治体が一時的に肩代わりする必要があるため負担感は強く、自治体に負担が出ない形の補填を求める声も上がる。 3党は来週、再び協議の場を設ける予定だ。地方の減収への対応について、具体的な検討がどこまで進むか注目される。(米沢文)