急増する「リンゴ病」は大人も危ない…妊婦は特に要注意 東京都は警報レベルに到達
小さな子どもがいる家庭は要注意だ。東京都内で先月17日までの1週間に報告された「リンゴ病」の患者数は、1医療機関あたり1.93人で、警報レベルに達したという。 WHOが緊急事態宣言…重症化リスクの高い「エムポックス」世界流行の兆し ◇ ◇ ◇ 「当クリニックでも、例年ほとんど見られなかったリンゴ病の患者さんが、今年に入ってから急増しています」 こう話すのは、「五良会クリニック白金高輪」の五藤良将理事長だ。 通称“リンゴ病”こと「伝染性紅斑」は、発熱、咳、鼻水といった風邪と似た症状が現れた後に、頬がリンゴのように赤くなり、やがて腕や足にレース状の発疹が見られる感染症だ。ヒトパルボウイルスB19が原因とされ、飛沫や、感染者が触れた物を介して感染する。一度感染すると生涯免疫を得られるため、再感染は非常にまれだという。 患者の多くは9歳以下の子どもが占めるが、大人が感染するケースもまれではない。大人の場合、子どものような高熱や、リンゴ病で典型的な頬の赤みは見られにくいという。なかでも大人で特徴的なのが「関節痛」だ。 「ウイルスに対して免疫反応が生じると、関節周囲の細い血管が影響を受けて痛みやこわばりが生じます。さらに大人では、手足のむくみが現れる場合も多く、症状から関節リウマチが疑われ、検査が必要になるケースも少なくありません」(五藤理事長=以下同) ほかにも足に紫色のアザのような皮疹ができる「紫斑」が現れる場合もあるというが、いずれの症状も一時的だという。 大人のリンゴ病は、子ども特有の症状が少なく、体に不調があってもリンゴ病と疑いを持つのが難しい。また、大人ではウイルスに感染しても症状が現れない不顕性感染も多く、知らぬ間に感染しているリスクも高いという。 「とりわけ妊婦さんは、本人に自覚症状がなくても胎盤を通して胎児に感染すると、胎児水腫をはじめとした胎児の異常を招きやすいことが分かっています。日本産婦人科・新生児血液学会のホームページでは、妊婦から胎児への感染率は約40%で、そのうち2~10%が胎児水腫を合併すると記載されています。最悪のケースでは流産や死産につながる恐れがあるので早めの対策が必要です」 ほかにも溶血性疾患(遺伝性球状赤血球症)の人は、骨髄内の赤芽球がウイルス感染によって破壊され、重度の貧血を起こすリスクが高いという。 ■感染対策の徹底が重要 「リンゴ病はほかの感染症に比べて潜伏期間が約10日と、比較的長い特徴があります。学校や幼稚園のクラスに1人でもウイルスを保有するお子さんがいれば、一瞬で広まるのは間違いありません。周囲に妊婦さんや基礎疾患がある方がいるのであれば注意が必要です」 母子の健康を守るためにも、日頃からマスクの着用や、こまめな手洗い、うがいといった感染対策を講じる必要がある。流行期間中はできるだけ人混みを避け、子どもとの食器やタオル、浴槽のお湯は共有しないこと。さらに、ヒトパルボウイルスB19は、70%以上のエタノール消毒液で死滅することが分かっている。こまめに手指消毒を行い、感染者が触れたドアノブやおもちゃなどは、エタノールを染み込ませたタオルなどで拭き取り、清潔に保つようにする。 「リンゴ病は、インフルエンザのように特効薬がなく、対症療法が中心です。ただし、重症例や合併症のリスクが高い患者さんに対しては、免疫グロブリン療法が選択される場合もあります。リンゴ病に感染しないよう感染対策を徹底し、万が一、不調があれば早めに医師に相談してください」