「寝酒」は意図せぬ目覚めと覚醒の原因に―良質な眠りのために必要な条件とは
◇周産期や更年期の女性、睡眠の質・量が低下傾向
睡眠ガイドでは、女性の睡眠についても取り上げています。出産後の女性ホルモンの変化によって眠れなくなり、気分が低下して産後うつなどによる自殺が、日本では多数起こっています。また、更年期のホルモンの変化でも睡眠が障害されます。 妊娠中はホルモン分泌のパターンが大きく変化し、それによって睡眠の量や質が低下すると胎児の健康リスクになる可能性が指摘されています。 出産後は授乳や夜泣きへの対応で細切れ睡眠を余儀なくされます。産後、特に著しい睡眠不足や夜間の中途覚醒が多い人は、産後うつのリスクが高くなります。母子の健康のためにも、妊娠中から出産後の睡眠の重要性を認識する必要があります。 また、更年期には女性ホルモンが低下することにより、寝付きが悪くなったり夜中に目が覚めるようになったりします。更年期による身体症状だけでなく、気分が沈んだり意欲が低下したりといった気分の落ち込みが生じ、それが睡眠を悪化させることもあります。女性ホルモンは筋の緊張を高めるはたらきがあり、低下するとその影響で睡眠中の気道が狭まり睡眠時無呼吸につながります。そこに少しの体重増加やアレルギー性疾患で鼻づまりなどが重なると“合わせ技”で病気として認定される程度の無呼吸になってしまうのです。 近年「女性の活躍」が言われるなか、40~50代の働き盛りの女性が、更年期障害によって活躍の場を失う可能性もあります。日本人はOECD加盟国で一番睡眠時間が短く、その中でも50~60代の女性が一番寝ていません。受験で遅くまで起きている子どもや、忙しくて長時間労働の旦那さんがいる中で一番遅くまで起きていなければいけないし、朝は弁当や朝食の準備で一番に起きなくてはいけない、という家庭が多いでしょう。睡眠時間が削られるうえに、更年期で睡眠の質も悪くなってくるので“ダブルパンチ”です。 このように、閉経前後の女性には睡眠を低下させる心身の症状が出やすいのですが、更年期症状の治療によって改善の可能性もあります。