日本が脅威なのか-USスチール問題が問う「国家安全保障」の意味
(ブルームバーグ): USスチールは数カ月にわたり、日本製鉄への売却が生き残る唯一の方法だと主張していた。しかし、バイデン米大統領は異なる考えを持っており、同盟国である日本に拠点を置く企業による買収であっても、国家安全保障上の懸念を解消するには不十分だと結論づけた。
これが、グローバルな貿易と投資における新しい政治のあり方だ。
買収阻止を3日に発表するに当たり、バイデン氏は日本製鉄による買収が「米国の国家安全保障と重要なサプライチェーンにリスクをもたらす」という「信頼に足る証拠」があると述べたが、その証拠が何であるかは明らかにしなかった。
バイデン氏は重要な物品の供給を確保するために大統領に経済に対する権限を与える国防生産法(DPA)を引用したが、これは同氏が米国の国家安全保障に対する脅威となるものの定義をより拡大して解釈していることをあらためて示すものだった。
「友好国や同盟国を安全保障上の脅威と宣言するのは異例だ。国家安全保障の定義がかつてよりも拡大しているように思える」と、クリントン政権の商務省高官で、現在は米戦略国際問題研究所(CSIS)のシニアアドバイザーを務めるビル・ラインシュ氏は述べた。日本は米国にとって、極めて重要な同盟国だ。
買収阻止の決定は2010年代半ばまで米国の貿易および投資政策の特徴であったグローバル化の原則から同国が急激に離れたことを示すものだと元政府当局者や専門家は指摘する。米国はそのシフトの一部として、漠然と定義された「国家安全保障」という考えに依存してきた。
「大統領や政権関係者が国家安全保障を理由に特定の行動を正当化する場合、国家安全保障を自分たちが望むように定義することができる」と、大西洋評議会ジオエコノミクスセンター、ステートクラフト・イニシアチブの常勤シニアフェロー、サラ・バウアーレ・ダンツマン氏は述べた。
ジャンピエール大統領報道官は買収阻止について、日本とは何の関係もなく「USスチールが米国資本で米国経営のままである」ことを目的としたものだと政権の決定を擁護した。