【証言・北方領土】水晶島と国後島・元島民 佐藤健夫さん(1)
上陸しても「昔の面影なし」
―島を見ると、どういう気持ちですか? いやあ、もうね、あまりに変わってるから、ちょっと唖然とするというか、もう呆然とするという気持ちで、上陸しても、あまりに昔の面影がないからね、やっぱり寂しいなあっていう、残念だっていうか、昔のにぎわい、結局ね、何も生き物ない、鳥もいないですよね。カラス、スズメ、そういうものも見えないし、結局、生きてるっていうものが感じないから、ほんとに。ただ、その70年占領されて、そのまんまの状態で放置されてきたっていうね。
昔のそういう人が住んで、近所で交流してね、確かにテレビもない、ラジオも満足にないようなね、そういう生活だったけど、やっぱりそこに住んでいた人のつながりと、生活には困んなかったからね、そういう生活があったっていうことを思い出すと、何かやっぱり寂しさとか、無念とか、虚しさとかね、そんなのを強く感ずるんですけどね。 ―当時の暮らしについて兄弟で話し合うことはありますか? たまに話題にはなりますけどね、もう島は返んないだって諦めが根本にあるから。上のほうの兄弟は、割合、苦しかったっていうかね、結構、働かなんない場面があって、つらかった場面、例えば水道もないからね、水くみとか全部、上の兄弟がやってたから、そういうつらい思い出も結構あるようなんですよ。だから、あんまりね、島に一緒に行こうっつっても、億劫だっていうかね、もう年とってるからね、だからね、行ってもしようがないなっていう、諦めっていうか、そういうような感じの兄弟多いんですよ。 もう、僕80ですからね、もう80代なってたらね、もうやっぱり一緒に行きたいっていうような気は薄いようですね。