【資産総額5億円超】90歳・元開業医の父に相続の相談を持ち掛けたら→「実はな…」「ウソでしょ!」60代の息子2人がドン引きした、まさかの告白
父が告白した、もうひとりの兄弟の存在
「いやもう、驚きましたよ。私も弟も還暦を過ぎていますが、そんな話はこれまで一度たりとも聞いていなかったのですから…」 父親によると、郷里から離れた医大に通っていたときに、当時の交際相手との間に子どもができ、20歳で学生結婚をしたそうです。しかし、結婚生活はうまくいかず、子どもが生まれる前に離婚。養育費は両親(太郎さん・二郎さんの祖父母)に借りて一括で支払い、その後は音信不通で、いまどうしているかもわからないそうです。 「70歳の兄がいたなんて…」 音信不通の、顔も知らない子ども(兄弟)でも、戸籍上はれっきとした相続人です。このまま放置してしまうと、父親が亡くなったあとに探し出し、遺産分割協議のテーブルについてもらうという、大変なストレスのかかる作業が必要になります。 「一体、どうしたらいいのでしょうか?」
公正証書遺言の作成を決意
このような場合に必須となるのが「遺言書」です。筆者と提携先の税理士がお2人に遺言書の作成を提案したところ、「お願いしたいです」と即答され「父親にすぐ相談するので」といい、事務所をあとにされました。 その後すぐ折り返しの電話があり、お2人から遺言書作成を提案された父親は、すぐに了承したとのこと。公正証書遺言の作成が決定しました。 父親は90歳のいまも1人で暮らし、意思確認も問題なく、バスや電車を乗り継いで、目的の場所へと出かけることもできます。筆者も遺言書作成時にお会いしましたが、とても90歳には見えないほど若々しい方でした。 その後の展開は早く、2週間後には父親の住まいから近い公証役場へ関係者一同が集まり、無事に公正証書遺言が作成されました。 ちなみに、高齢や体調により外出が難しい方の場合は、出張サービスを利用することで遺言書を作ることは可能です。その場合、多少の出張費が必要になります。
相続時に「見知らぬきょうだい」が発覚するケースは多い
遺言書が無事に完成すると、太郎さん・二郎さんともに、心から安堵された様子でした。今回作成した遺言書は、遺産のすべてを太郎さんと二郎さんに相続させるとの内容になっていることから、遺留分の問題は残るのですが、それでも、遺産分割協議をせずに不動産の名義が変えられるほか、金融資産の手続きもできるようになるため「本当に準備してよかった」と喜んでいました。 今後、父親が介護施設に移るなどの際には、自宅やほかの不動産の処分をするなどして遺留分対策もしたいとのご希望から、引き続きサポートすることになりましたが、今回の遺言書の件は無事に一区切りとなりました。 親が亡くなったときに、見も知らぬきょうだいの存在が発覚するケースは、実は珍しくありません。山田さんご兄弟のお父様のように、事前に情報を共有してもらえれば、心構えもできますし、対策を立てることもできるのですが、なにも知らされていなければ、見も知らぬ相手と遺産分割協議の席につかねばならないほか、場合によっては遺産分割することで、被相続人に尽くした相続人の生活基盤が奪われることにもなりかねません。 家族に話しにくい内容ではあることは理解できますが、それでも、腹をくくって情報共有することが重要なのです。 ※登場人物は仮名です。プライバシーに配慮し、実際の相談内容と変えている部分があります。 曽根 惠子 株式会社夢相続代表取締役 公認不動産コンサルティングマスター 相続対策専門士 ◆相続対策専門士とは?◆ 公益財団法人 不動産流通推進センター(旧 不動産流通近代化センター、retpc.jp) 認定資格。国土交通大臣の登録を受け、不動産コンサルティングを円滑に行うために必要な知識及び技能に関する試験に合格し、宅建取引士・不動産鑑定士・一級建築士の資格を有する者が「公認 不動産コンサルティングマスター」と認定され、そのなかから相続に関する専門コースを修了したものが「相続対策専門士」として認定されます。相続対策専門士は、顧客のニーズを把握し、ワンストップで解決に導くための提案を行います。なお、資格は1年ごとの更新制で、業務を通じて更新要件を満たす必要があります。 「相続対策専門士」は問題解決の窓口となり、弁護士、税理士の業務につなげていく役割であり、業法に抵触する職務を担当することはありません。
曽根 惠子