岡山市「バス路線」再編案で公共交通の新時代へ! 「公設民営」とは何か? 市民の移動自由を拡大する戦略に迫る
市内のバス・電車連携強化
しかし、岡氏は20%に達するためには「バスの再編案だけでは不十分」であるという。その実現のためには、バスと連携するJR各線と路面電車の再編も必要だからだ。 現在、岡山市内を走る路面電車・岡山電気軌道では利便性を強化するために、岡山駅前の停留所を駅側に約100m延伸し、横断歩道などを通らずに直接乗り換えができるための工事が進んでいる。これは、再編計画のほんの一部分だ。岡氏は、バス路線再編案と同じ文脈で ・路面電車の市内環状路線化 ・吉備線 次世代型路面電車(LRT)化 ・赤穂線LRT的運用 の実現も検討されるべきだという。こうした計画を実現した上で、RACDAが提唱する、目指すべき交通環境は次のようなものだ。 ・全市民が最寄りの停留所から300m徒歩5分 ・市内のどこからでも移動は1時間以内 ・市内のどこでも移動は500円以内 ・ピーク時以外はすべての乗客が座れる ・始発~終バスまで最低でも30分間隔 そのために、当面の目標を岡氏は次のように語る。 「熊本市では“車1割削減・渋滞半減・公共交通2倍”を目標として公共交通の整備を行っています。岡山市でも同様の目標を立てて事業化を進める必要があるでしょう」 なにより、こうした施策は公共交通を維持するためだけのものではない。その先に見据えているのは、地域の発展だ。 「バスのないところには高校生もお年寄りも住めません。都市交通を充実させれば移住定住を促進させ、商業集積地も拡大し都市は発展するでしょう」
再編の本質的意味
公共交通の再編にあたって大切なのは、利用者の真のニーズに応えることだ。 今回の再編案は、利便性を高めるために増便と路線整備を行う、まさに利用者目線に立った計画となっている。この取り組みが、市民の移動の自由を確保し、住みやすい街づくりに大きく貢献することは間違いない。 これまで「公共交通の再編」という言葉は人口減や過疎化の続く地域での 「維持」 を連想させるものだった。しかし、本当の意味での再編は、地域のさらなる発展を目的としたものなのだ。 岡山市の挑戦は、公共交通を軸とした持続可能なまちづくりのモデルケースとなるだろう。今後、この再編案が市民の日常生活をどのように変えていくのか、そしてそれが地域の発展にどのような好影響を与えるのか、大いに期待が持てる。 この社会実験の成果をひとつの指針として、他の地域でも同様の取り組みが広がっていくのだろうか。公共交通を中心に据えた、活力に満ちた街づくりの第1歩として、岡山市の動向から目が離せない。
昼間たかし(ルポライター)