勝者なき参院選 安倍政権は“信任されたとは言えない”
自民党と公明党が非改選議席と合わせ141議席、野党が104議席という結果だった参院選。いわゆる改憲勢力による3分の2には届かなかったものの、与党は改選議席の過半数ラインを突破し、選挙は与党の勝利として受け止められている。今回の参院選をどう評価するか。上智大国際教養学部の中野晃一教授(政治学)に聞いた。 【グラフ】過去最低は「44.52%」 令和最初の参院選の投票率は?
国民の2人に1人も投票に行っていない
「一番衝撃的なことは、投票率が半分を割ってしまったこと。国民の2人に1人も投票に行かっていない。今までもかろうじて(50%を)上回っている程度だったが、下回ってしまったというのは重要」 中野教授はまず、48.80%という過去2番目に低い投票率に言及した。投票率が50%を割ったのは過去最低を記録した1995年の参院選と今回の2回しかない。「しかもそれがあまり話題になっていない。何をおいても深刻な問題だ」と懸念する。 今回の参院選は、自民党と公明党の連立与党が改選過半数をクリアして71議席を獲得。野党では立憲民主党が17議席と倍増した一方で、国民民主党は2議席減の6議席と振るわず、憲法改正に前向きな日本維新の会は10議席と勢力を伸ばした。 「その(低投票率の)中で、勝ったとか負けたとか躍進したとか、というのは話が違う気がする。政権与党が一番責任が重いが、野党も含めてすべての政党が負けた。それをとっても安倍政権が信任されたということはあり得ない」との見方を示す。
単独過半数に届かなかった自民党
さらに中野教授は、参院選で「与党が勝利した」という評価にも異議を唱える。 「自公の連立与党の枠組みが続いているので、その前提で話をするようになっているが、そもそもこの2つは違う政党で、選挙でも協力しているが、それぞれの公約を掲げ、比例や(改選数2以上の)複数区ではそれぞれの候補者で戦っている。同一の政党ではない。その上で、自民党単体でみた時、今回また単独過半数を失ったことになる」 自民党は前回2016年の参院選では当初、単独過半数に達しなかったが、追加公認や無所属議員の入党などで27年ぶりに単独過半数を回復した。単独過半数を維持するには今回67議席必要だったが、今回は57議席で10議席下回り、単独過半数とはならなかった。 「自民党が単独で法案を提出しても衆参両院を通すことができない。これをもって自民党が勝っているというのはあり得ない。どうみても安倍政権の勝利ということにはならない」 参院選では自公の与党と、日本維新の会を合わせた、いわゆる「改憲勢力」が、国会での憲法改正発議に必要な3分の2の議席に届かなかったことも注目されたが、「改憲発議以前の問題として、法律も通せないところに自民党は落ちている」という。