「貯金1000万円+退職金アリ」の公務員。老後は夫婦2人なら、築25年の持ち家を売って「賃貸」に引っ越すべき? 住み替えを「家賃10万円」でシミュレーション
持ち家を売って、賃貸に住み替えた場合のシミュレーション
経済的な側面だけを見れば、家賃を払う必要のない持ち家が有利にも感じられます。一方、賃貸で老後生活を送るのは無理なのでしょうか。 そこで、賃貸の場合だと老後の収支がどうなるのか、貯金1000万円の公務員が60歳で退職し、持ち家を売却して賃貸に住み替える例で考えてみましょう。なお、60歳から年金が支給される65歳までは、再任用で働いて家賃を含めた収支はプラスマイナスゼロとします。 まず、勤続年数の長い公務員で退職金2000万円を想定し、うち1000万円は住宅ローンの一括返済に充てる前提で考えます。また、図表1のデータから築25年の持ち家の売却価格は3500万円、諸経費を引いた3300万円ぐらいが手元に残ると仮定します。貯蓄1000万円に退職金2000万円と持ち家を売却した3300万円を加え、住宅ローン返済の1000万円を差し引くと、結果的に60歳時点での資産総額は5300万円です。 図表1
公益財団法人 東日本不動産流通機構 築年数から見た首都圏の不動産流通市場(2023年) 中古戸建住宅の築年帯別平均価格 一方、65歳以降も月10万円の家賃が続くと仮定すれば、90歳まで存命すると家賃総額は10万円×12ヶ月×25年=3000万円です。さらに図表2のとおり、65歳以上の無職高齢夫婦の平均的な支出は、総務省統計局の家計調査から月28万円ぐらいが想定されます。 そのうち住居費約1万6000円を差し引き、月26万4000円を「家賃以外の支出」と考えてみます。 図表2
総務省統計局 家計調査報告 家計収支編 2023年(令和5年)平均結果の概要 さらに公務員の家庭であれば、夫婦合わせて23万円程度の年金は見込まれるでしょう。そのため、家賃を除いた月々の不足額は3万4000円、年間40万8000円程度で、65歳から90歳までの25年間で1020万円です。計算上では90歳時点でも5300万円-3000万円-1020万円=1280万円の資産が残ります。 この試算は経済的基盤が比較的整った公務員の例ですが、賃貸は家賃の選択余地もあり、資産や年金の状況、生活スタイル次第で老後も賃貸で暮らすことは十分に可能です。