北海道から九州まで「ローカル私鉄気動車」の記憶 写真で振り返る戦前生まれや「バスそっくり」など個性派車両
■まさにバスのようだった「レールバス」 とくに人気があったのは南部縦貫鉄道のレールバスだ。文字通りバスの車体が線路を走るようで、メカニズムもバスのごとき機械式変速機を用いているためクラッチとシフトレバーがあり、筆者は運転士がギアチェンジをする光景が今も目に焼き付いている。同線は1997年に休止、2002年に廃止となったが、現在も2両とも動態保存されているのはうれしい限りだ。 岩手開発鉄道は現在も貨物鉄道として現役だが、1992年までは旅客用の気動車も運行していた。流線形のクラシックなスタイルのキハ301は前述した夕張鉄道のキハ200形で、国鉄のキハ07形気動車とほぼ同一設計であった。自社発注のキハ202は切妻構造の簡素なデザインで「食パン」の愛称でも呼ばれた。惜しくも両車とも解体されてしまい現存しない。
関東には非電化ローカル私鉄が意外にも多く存在するが、廃止されてしまった路線もある。その中で、筆者が好きだったのは鹿島鉄道鉾田線(茨城県)だ。常磐線石岡駅から鉾田まで26.9kmを結び、霞ヶ浦沿岸を走る風光明媚な鉄道だった。 同線の気動車では、正面2枚窓のいわゆる「湘南顔」のキハ430形が思い出深い。加越能鉄道加越線(富山県)が廃線となった際にやってきた車両で人気が高かった。戦前生まれながら2007年の廃線まで活躍したキハ600形も特筆すべき存在だ。現在は1両が市内の温泉施設「ほっとパーク鉾田」で静態保存されている。
■日本初のステンレス気動車はローカル線に 一方、一時は廃線の危機にあったものの第三セクターとして再出発し、ついには路線延伸が認可されるなど活況を呈しているひたちなか海浜鉄道(旧茨城交通湊線、茨城県)も、かつては個性的な気動車の宝庫だった。元羽幌炭礦鉄道(北海道)のキハ22形や元留萌鉄道(北海道)のキハ1100形など北海道の廃止路線から転じた車両が多かったのが特徴で、そのほかにも元国鉄のキハ11形などさまざまな気動車の活躍が思い出される。