地方の「カネと政治」の闇を描くドキュメンタリー│映画『はりぼて』
ジャーナリズムを賛美して終わらない”結末”
キャスターも兼ねているためかソフトな外見の五百旗頭記者も、理系の若手研究者のような雰囲気の砂沢記者も、”風貌の圧力”という点では議員たちに貫禄負けしている。それだけに、この2人の行動力と執念、そして挑戦した仕事の大きさがじわじわと伝わってくる。 一連の調査報道をリードしながら鋭い疑問を投げかける五百旗頭記者に対し、富山出身の砂沢記者はお国言葉を交えながら愚直に突っ込んでいく、というバランスもとてもいい。チューリップテレビは、1990年に地元で開局した社員70人の若いテレビ局であり、この2人をバックアップする体制がつくりやすかったであろうことがうかがえる。 しかしこのドキュメンタリーは、ジャーナリズムの賛美では終わらない。 新しいルールがつくられたにもかかわらず、まだ古い時代の不正が出続ける富山市議会。居座ろうとする議員。こうした中で、政治家たちに忖度し「これ以上の追及はするな」という判断をトップが下したのだろうか、砂沢は配置転換となり、五百旗頭は苦渋の退職宣言をする。地元政治を追い詰めた大きな疑問符は、最後にジャーナリズム自身に向けられているのだ。 尚その後、石川テレビ放送に移籍した五百旗頭幸男は、『裸のムラ』(2022)という政治ドキュメンタリーを撮った。今年初めの能登半島地震の後、被災者支援の立ち遅れが指摘されている石川県だが、その古い行政体質が活写された佳作である。
大野 左紀子