地方の「カネと政治」の闇を描くドキュメンタリー│映画『はりぼて』
次々に発覚する不正事実と豹変する議員の態度
招集された報酬審議会の人選は富山市当局で、そのうちの4人が自民党と関わりを持っていた。 議会を傍聴する市民からは「恥を知れ」などの声が飛ぶが、議員報酬値上げ議案は可決。「結論ありきでは?」と問う五百旗頭記者に、森市長は「呑まなきゃいけないでしょ」。ここまでで、この富山市議会の抱える構造的な問題が浮き彫りになっている。 この後、五百旗頭記者らは、すべての市議会議員の政務活動費(1人15万)について事務局に情報公開を求めると同時に、中川議員の活動歴を追ってあちこちで聞き込み取材を開始する。すると名前のない領収書や、行われていない市政報告会の報告書などが頻出し、それがニュースになったところで中川議員は失踪。ようやく姿を現した彼は、記者会見でそれまでとは打って変わって弱々しい顔を見せ、領収書の偽造を認めた。 総額699万円の不正で中川議員が辞職したのを皮切りに、彼に近い議員、他会派の議員などでも、架空請求、カラ出張、領収書偽造が連続的に発覚、1カ月に12人もの議員が次々と辞職する異常事態となる。 家まで来た記者に問い詰められて、適当な返事をする議員、覚えてないと嘯く議員たちが、次の場面ではあっさり「どうもすみません」と頭を下げるというパターンが繰り返される。不正行為を反省してというより、「ドン」が謝罪して辞職したのだから、それに倣うしかないといった様相だ。 やがて補欠選挙で新人13人が当選し、議員報酬値上げ撤回が可決され、全国一厳しい政務活動費の新ルールが制定される。これで透明性の高い健全な市議会に生まれ変わるはず‥‥と思いきや、実際はまったくそうはならないまま、徐々に地方行政の深い闇が見えてくる。 ◾️登場人物の「顔」に注目 このドキュメンタリーを面白くしているのは、こう言っては語弊を招くかもしれないが、登場する人々の顔だ。まるで本物の役者を起用しているかのように、それぞれの”役割”に顔がぴったりとハマっている。 まず前半の要の人物、中川議員の面構えが凄い。睨まれたら怖そうな大造りで肉厚の顔立ちだが、よく見るとどこか味わいもある。いろんな場面を酒と金と人情でまとめてきたんだろうなと想像させるような、昔ながらの”地元の顔”。謝罪会見での見るも無惨な憔悴ぶりと合わせて、タイトルの「はりぼて」感がもっとも端的に現れている。