還暦を過ぎた事件記者が保育士を目指す ポケットにセブンスターいざ短大入学式へ
おめかしをした保護者がにこやかにわが子を見守り、晴れ姿を撮影しています。慈しんで育てたお子さんのため、決して安くはない入学金や授業料を工面なさったに相違ありません。これからの2年間を楽しく、事故なく謳歌して。そう心底から願っていることでしょう。 ご安心めされよ、万が一お子さんが危難に遭遇した折には、及ばずながら当方が救いの手を差し延べて進ぜますとも。 ■セブンスター2本ふかして 穏やかな心持ちになったところで一服したくなりました。喫煙所を探すも学内は無情にも全面禁煙です。当方が学生時代は、講義中の教室でも吸えたのになあ。隔世の感があります。やむなく近くのコンビニエンスストアへ。40年以上苦楽を共にしているセブンスター、きょうも変わらずにうまい。 でも子どもや妊婦さんをはじめ人さまがいるところでは絶対に吸いません。20歳未満の同級生にも喫煙は「ダメ、絶対」と言わなければ。立て続けに2本ふかしながら、大人の務めを果たすことを誓いました。 午前9時半すぎ、会場の講堂へ。 それまで当方を保護者か教職員とみなし、安らかに見守ってくださっていた人たちの視線が一転、にわかに訝しむそれに変わりました。無理もありません。フレッシュマンにほど遠い風体のおっさんが、野獣のごとき険しい目付きで周囲を睥睨しつつ、肩で風切りながら新入生の席に向かってずんずんと歩を進めるのですから。警備員さんに制止されなかったのが不思議です。 「ご疑問あらばどうぞ遠慮なくご誰何あれ、おう?」 胸の内で呟きつつ固いパイプ椅子に行儀よく、ちんまり座っていました。式は粛々と延々と続きます。 寄る年波には勝てませぬ。かねて悪くしている腰に痛みが生じました。抜かった。格好つけずに腰痛緩和ベルトを装着しておけばよかった。拳でとんとんと叩いても効果なし。尾籠な話で恐縮ながら、コーヒーを朝から5杯も飲んだせいで尿意を催してまいりました。入学するのがいくら保育学科とはいえ、幼児のように挙手して「せんせい、おしっこ」とは言えませぬ。 「勉学精進」を誓い、ずっと歯を食いしばっていたためか部分入れ歯がずれました。いったん外し、装着し直したい。