これからの旅行のキーワードは「備え」と「節約」…悪天候、地震&円安や物価高で変わった旅の価値観
お盆休みのUターンラッシュを台風が直撃、旅行メディアでは「節約」が人気テーマに……
コロナ後の旅行は、国内・海外とも「旅費が上がった」という声がよく聞かれる。日々の物価高に加え、円安の影響もあり、「コロナ前のような旅行はできない」という人も少なくないだろう。 【ヤバい…!】大型台風襲来でリスク増大… 巨大土石流「全国5大警戒エリア」 そんな中で近ごろ、雑誌やWebで「節約」をテーマとした旅行のテクニックを紹介する記事が人気だ。 さらに最近気になるのが、台風や異常気象、災害などでの交通ダイヤの乱れ。飛行機の欠航・大幅遅延、新幹線の運転見合わせなどのニュースが以前より格段に増えている。トラブルに遭遇した時の対処や「備え」も重要になってきている。 ◆旅費が上がった主な理由と「節約」テクニック 国内旅行は、日本人によるリベンジ旅行以上に、円安による訪日外国人(インバウンド)急増の影響が大きい。特に東京や大阪、福岡といった都市部を中心にホテルの相場が軒並み高騰している。 レジャー目的の旅行だけでなく、移動が必要不可欠な出張パーソンが「会社規定内の金額でホテルにとても泊まれない」と悲鳴を上げる事態となっている。インバウンドに人気の京都では、観光シーズンで高級ホテルが1泊1室10万円超えも決して珍しくない。 一方、海外旅行では、一時は「1ドル=160円」という空前の円安に加え、多くの国・地域で現地の物価高もあり、滞在すればするほど旅費をひっ迫する。日本発着の航空券もインバウンド人気で運賃が高止まりし、追加の燃油サーチャージも高値が続く。 節約がテーマの旅行テクニックとして、海外旅行では、旅費合計が少なくて済む近場の韓国や台湾、その他日本よりまだ物価が安いベトナムやトルコなどが「おすすめの行き先」として、よく紹介されている。また、現地でのリーズナブルな過ごし方、食事、ネット接続方法などの特集もよく目にするようになった。 国内旅行では、飛行機では、大手航空会社(フルサービスキャリア、FSC)と格安航空会社(ローコストキャリア、LCC)の中間にある「MCC」(中堅航空会社、ミドルコストキャリア)がコストパフォーマンス良いと、注目を集めている。 ホテルでは、中心地より離れたホテルや、世界的なチェーンホテルグループに属さない地元密着型のホテルが狙い目だ。知恵を絞れば安く済む=節約につながることもあり、旅行プランを考える際には、ひとまず調べて損はないだろう。 ◆台風、ゲリラ雷雨と頻発する地震…交通機関の定時運航が当たり前でなくなっている 近ごろ頻発するゲリラ雷雨は、飛行機の運航で大きな影響を及ぼしている。特に、雷雨だと落雷の危険があるとし、空港での地上作業は一時停止する。 8月7日夜には、羽田空港で激しい雷雨で地上作業が2時間ほど停止。羽田空港は、国際空港評議会(ACI)によると、1時間当たりの発着数は最大90回で、世界有数の混雑空港で知られる。発着がいったん止まると、その影響は甚大だ。 飛行中の便は、着陸待ちでの燃料不足で関西や中部などの空港へダイバート(行き先変更)したり出発空港へ引き返したり、なんとか羽田到着しても深夜で地上交通がなく、空港で一夜を明かす客も多かった。 その影響による欠航や遅延が翌日8日まで見られた中、その日の夕方、宮崎で震度6弱の地震が起き、宮崎空港の施設でも一部破損するなどし、欠航便も出た。さらに9日夜、今度は神奈川で震度5弱の地震が発生。羽田空港は被害こそなかったものの、東海道新幹線が一時運転見合わせとなり、お盆休み前の金曜夜だったため、出張や帰省などの客に影響した。 異常気象に、地震が相次ぎ、さらに夏から秋にかけては台風も懸念される。しかも、先の地震で南海トラフ地震の「臨時情報(巨大地震注意)」が初めて出た。今後、もし旅行する場合でも「備え」に対する準備や対策が大事になるのは間違いない。 ◆自ら「備える」方法とは? 運賃が安いLCCは“自衛”も大事 では、その「備え」は、どうすればよいか。 まずは「旅行保険」で、自ら備える。国内の場合、国内旅行傷害保険に「航空便遅延保険」があれば、欠航や大幅遅延、着陸地変更などが補償内だ。クレジットカードに付帯している場合もあるが、海外旅行保険が付帯されていても、国内旅行保険はごく一部のゴールドカードなどに限られるので旅行前にチェックしておきたい。 また、ANA便の利用であれば、キャンセル保険「そらもよう」に加入できる。悪天候による欠航のおそれなどの事由で、予約取り消し・払い戻しした場合の取消手数料と払戻手数料、悪天候などで搭乗予定便が欠航または大幅遅延となった場合などの追加費用に対して、1フライトごと被保険者1名あたり1万円(定額)が補償される。遅延に関しては、到着予定から6時間以上の遅延が補償の対象になる。 また、入場券などを事前取得したイベントの中止、開催日時・場所の変更によるフライトの予約取り消しや払い戻しも補償される。保険料は、VALUE運賃での予約の場合だと運賃額1万5000円以下で、通常便400円/特定便800円から(特定便:7~10月の沖縄発着便、10~3月の北海道発着便/通常便は特定便以外の全便)。搭乗7日前までの申し込みが必要だ。 海外旅行でも、欠航や大幅遅延などにリスクはある。特に、LCCはFSCよりタイトな運航ダイヤで機材の数も限られ、前便が遅れると後ろの便にも影響しやすい。 ’24年2月に就航したMCCのひとつ Air Japan(エアージャパン)は当初1機2路線で遅延が相次いだことがいきなり話題となり、現在も2機3路線で、機材トラブルが影響しての大幅遅延がよく起きている。LCCやMCCは航空券が安い分、サポート面でFSCより劣る。 スケジュールがタイトな時はFSC、日程に余裕がある場合はLCCやMCCで、といった使い分けも必要だろう。また、いざという時のために保険で「自衛」しておくこともおすすめする。 ◆新幹線も飛行機も「Webで自ら変更」するのが手っ取り早い 航空券は欠航だと、基本全額払い戻しとなる。欠航が台風や大雪など悪天候が理由の場合と、機材繰りや整備など自社都合なのかで補償内容が異なり、自社都合で深夜到着だとホテル代や自宅までのタクシー代などが出ることも。 台風など予測可能な場合は、出発の前日や当日に「悪天候による欠航のおそれ」として該当する便が発表され、その場合、変更や払い戻しが手数料無料となる。搭乗予定の便が遭遇する可能性があれば、航空会社の公式サイトや公式アプリなどにある「運航の見通し」は逐一チェックしたい。 また、新幹線でもしトラブルに遭遇した場合、駅の「みどりの窓口」に並ぶより、東海道新幹線だと「スマートEX」(登録無料)や「エクスプレス予約」(有料)など、スマートフォンやパソコンなどから自分でこまめに変更するほうがはるかに早く、心身ともにラク。 ただ、発券すると窓口でしか変更できなくなるため、ぎりぎりまで発券しないこと。主要駅の窓口は今、インバウンドも多いため、トラブル時に限らず長蛇の列となって待つだけで時間をロスする。できれば平時に何度か利用し、使い方に慣れておくことも重要だ。 さらに、旅行となると、予約済みのホテルやレンタカーなどの問題も出てくる。大幅に遅れる、または行けないことが確実になったらすぐに先方へまず連絡すること。かかるキャンセル料などは、現状を説明したうえで相談してみることが肝心だ。 ◆いざトラブルに遭遇した時、できる限り慌てないために…… 旅行でのトラブルといえば、「海外が多めで国内は少なめ」というイメージが以前はあった。今は国内も悪天候に災害が頻発し、さらに機材や車両のトラブルや事故なども起きないとは限らない。 いざトラブルが起きると、出張など移動頻度が多い人ほど、万が一のトラブル対応に慣れている印象がある。代替ルートや急な宿泊の手配などはいわば「早い者勝ち」で、トラブルをできる限り早く把握し、即断即決して動くスピード感が重要になる。 経験を積むと、備えも身に付いてくるが、平時から「もしトラブルに遭ったら」と想定したり、実際にトラブルに遭った人の体験を知っておいたりする心がけを。旅行保険はもちろん、備えあれば患いなしで、自分の一連の予約で「キャンセルポリシー」などは最初にしっかり調べておく。 コロナ前とはがらりと変わった旅行事情。節約できる部分がないか見直す、そして保険などの備えや、いざという時のためのシミュレーションなど、コロナ後は「新時代の旅行スタイル」と割り切るのも大事ではないだろうか。 取材・文:シカマアキ
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