【ドローン活用】実装へ特区生かして(9月20日)
福島県は今年度、ドローン配送の実現に向けた地域課題解決連携特区(連携絆特区)に長崎県と共に指定された。県内は、指定に伴う規制緩和で有人地帯を遠隔操作で飛ばす「レベル4」の飛行が実行しやすい環境となる。特区の優位性を生かして自治体、企業が連携し、ドローンの社会実装を加速させるよう求めたい。 長崎県では既に、離島間で医薬品や食料品などを無人で配送する民間のサービスが展開され、先進地としての実績が蓄積されている。本県は福島・国際研究産業都市(イノベーション・コースト)構想によってドローン関連の開発企業が数多く進出している。福島ロボットテストフィールド(ロボテス、南相馬市・浪江町)を拠点にした多様な実証事業が行われ、技術面でサポートする下地が整っている。両県それぞれの特性を生かしたドローン配送の仕組みの構築が期待されている。 南相馬市では今年3月、ドローンに付けたカメラで安全を確認し、目視による地上からの監視が不要なレベル3・5で、牛丼を配送する実証が行われた。この際、無人地帯に飛行が限られ、民家や施設などを避けたルートを設定する必要があった。
レベル4は、市街地など有人地帯での飛行が可能で、活用の幅が広がる。特区指定により、従来は飛行コースごとに必要だった国への許可申請が、より広い範囲で一括申請できる。複数の機体を同じ時間帯に飛ばすことも認められる。配送しやすくなり、さまざまな場面での利用促進が図られる。 レベル4で飛行する機体には、最も高度な安全性を証明する国の第1種型式認証が求められる。現在、国内メーカーで取得しているのは1社の1種類のみだ。牛丼配送の実証に携わった南相馬市のイームズロボティクスは現在申請中で、県産第1号となって技術をさらに磨いてほしい。 ドローン活用を促進しようと、県とロボテスは今月、原発事故被災地を中心とした初の市町村向け勉強会を開いた。人口減や帰還困難区域などの課題を、ドローンを使って解決する方策を考える契機となった。県内全域で利用が広がるよう、県はこの種の説明会を積極的に設け、物品配送にとどまらない利活用の可能性を探るべきだ。(平田団)