高松宮殿下記念世界文化賞受賞を記念して振り返る、坂 茂が世界を魅了するデザインの秘密
プリツカー賞や紫綬褒章など、錚々たる賞を受賞してきた坂 茂さん。今年、芸術・文化の分野で優れた功績をあげた人に贈られる「高松宮殿下記念世界文化賞」の建築部門を受賞しました。ここでは、日本が誇る建築家である坂 茂さんの代表作を振り返ります。 【写真集】坂 茂の建築作品12選!日本を代表する建築家が手掛けた国内外の代表作
1. クライストチャーチ 紙の聖堂/ニュージーランド(2013年)
2011年2月に発生した地震で被害を受けたクライストチャーチ大聖堂。 新たに再建されるまで仮設のカテドラルが必要となり、坂さんの手によって仮設のカテドラルが建てられました。使われた素材は、現地で調達が用意で低コストである「紙管」。東日本大震災やルワンダなどの仮設住宅でも使用されました。 ステンドグラスが美しい聖堂内には98本の紙管が用いられており、十字架も紙で出来ています。また、もとの大聖堂の平面と立面のジオメトリーを受け継ぐため、紙管の角度を調整しています。
2. 避難所用・紙の間仕切りシステム/世界各国(1994年~)
坂 茂さんがこれまで手掛けてきたプロジェクトのなかでも特に国際的に評価されているのが、災害や戦争の被害者に向けた支援活動です。 その始まりは、1995年に発生した阪神・淡路大震災でした。 建物の倒壊によって多くの人の命が失われた事実に建築家としての責任を感じた坂さんは、仮説住宅や避難所をつくり、世界各国で支援を続けながら、避難所でプライバシーを確保できるシステムを考案。度重なる改良を経て、2006年に「避難所用・紙の間仕切りシステム(PPS)」を完成させました。 このシステムは、紙管をフレームとして使い、そこに布をかけるというシンプルな仕組みで、30分で設置できます。また、2m×2mの空間を基本に、いくらでもグリット状に拡張することができるため、設置場所の広さを選びません。布はカーテンのように開閉するため、換気もでき衛生的、かつ内部の様子も必要に応じて見やすいつくりとなっています。東日本大震災や熊本地震、九州南部豪雨といった国内外の災害の被災地だけでなく、ウクライナの難民施設でも使われました。