「魚が跳ねる!」自ら串で刺したヤマメの塩焼きほおばる高校生…「農泊」通じて「食料」を自分事に
「うわ、この魚、生きが良くて跳ねる!」「ふわふわしていて、おいしい」――。11月中旬、晩秋のひんやりとした長崎県松浦市の山間地に設けられたヤマメの釣り堀は、修学旅行で訪れた東京都立竹早高(文京区)2年生20人の興奮と熱気に包まれていた。 【動画】ヤマメ釣りや串刺し、わくわくの体験
生徒たちは地元住民の金子庄一郎さん(70)らの助けを借りながら、釣ったヤマメを自ら串で刺し、塩焼きにして食べていた。
生まれも育ちも東京で釣り自体がほぼ初めてという生徒(17)は「普段周りにない大自然の中で、ネットの映像などではわからない貴重な体験をさせてもらった。都会の子たちは触れる機会がないだけで、こういう体験ができたら、農業や漁業に目を向けると思う」と話した。
竹早高の生徒約120人は、松浦市に2泊3日の日程で来訪。班に分かれて昼は釣りや森林間伐、そば打ちなど、この地域ならではの体験をし、夜は金子さんら住民の家に宿泊した。
受け入れ事業を行うのは一般社団法人「まつうら党交流公社」。観光資源が比較的豊富な佐世保、平戸両市に隣接し、素通りされがちだった松浦の豊かな自然を生かして人を呼び込もうと発足した。関東や関西を中心に中高生の修学旅行を受け入れてきた。コロナ禍で修学旅行はほぼ皆無になったが、昨年は57校(約1万人)が訪れた。
公社の山内信太朗マネジャー(39)は「都会の子の中には魚が泳いでいたり、血が出たりするのを見て、びっくりする人もいる。感受性が豊かな若い時期に、自分の食料がどうやってできているのか知ることは命を大事にいただく心につながるし、ゆくゆくは食料安全保障についても考えることになるはずだ」と話す。
農山漁村の「関係人口」拡大目指す
日本全体の人口減少が進む中、国は、移住する「定住人口」とも、観光に来る「交流人口」とも違う、地域と関わる人々を「関係人口」と定義する。農林水産省は、過疎化が進む農山漁村の活性化と持続的な収益確保、都市からの移住などを見据え、都市と農村の交流を重視。関係人口の拡大を図ろうと、地域資源を活用した食事や体験をし、農山漁村に宿泊する「農泊」を推進している。