Bリーグ最優秀審判賞の加藤誉樹が語る、日本審判団へのFIBAの信頼「すごく良い形で来ているねと言ってもらえています」
「絡まった糸をほぐすようなコミュニケーションのやり方や発信を増やしていくのは大切なこと」
――FIBAの方が、「すごく良い形で来ているね」と言うのは、専門的なことで難しいと思いますが、例えばどういうところを評価されているのでしょうか。 判定が正しいかどうか、というのがレフリーの仕事でフォーカスされがちではあると思いますが、大切なのは判定の再現性だと思います。正しい判定を続けるには、正しいテクニックが必要です。その部分でFIBAと日本では全く同じことをやっています。例えば笛を吹くタイミングで、コンタクトがおきた直後に笛を吹くと、ファウルではないものまでファウルとコールしてしまう可能性が高まってしまう。だからコンタクトを受けた側のプレーの状況までしっかりと確認してから笛を吹きます。1つの判定の裏にはすごく緻密なテクニックがあって、それを丁寧に積み上げていくことが判定の精度を上げていくことに繋がります。こういった取り組みはFIBAと日本でやっていることは同じで、評価してもらっています。 ――一般的なバスケットボールファンからすると、Bリーグで戦っている選手たちがワールドカップやオリンピックの舞台でも活躍した姿を見ると、日本の競技レベルは上がっていると分かります。ただ、レフリングの技術の向上はかなり専門的な部分で非常に分かりにくいです。そういう部分も、審判の方へのネカティブな反応が増えている一因になっていると感じています。加藤さんは、この点についてどのように思っていますか。 ここ数年、JBAでメディアブリーフィングを行うなど審判の取り組みについてすごく情報を発信してもらっています。ただ、それでも、情報が伝わりきれていないところはあると思います。そして、やはり分からないものに対して、不信感や嫌悪感を抱きやすいところはあります。判定に関する詳細な部分をどこまで伝えるべきなのか、という部分はありますが、例えば選手とよく会話になるのは笛のタイミングです。「合っているけど遅いよね」という声も選手から言われることがよくあります。ただ、これは先ほどお話したように、プレーを最後までしっかり確認してから吹くからだと伝えると、納得してくれます。 このように正しくできているのに、見ている側がそれをわからないので批判を浴びてしまうことがあるとすれば、絡まった糸をほぐすようなコミュニケーションのやり方や発信を増やしていくのは大切なことです。ファンの皆さんがわからないが故に、正しいものに対して間違っていると感じてしまう部分があるとしたら、実はこうなんですと伝えていく。そうしていくことで、ファンの皆さんも必要のないフラストレーションをためないでよりバスケットボールを楽しめると思います。
鈴木栄一